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noteを2023年11月から始めました。ブログでは発信できない医療ソーシャルワーカーのタブーを表面化していこうと考えています。「MSWってこうだけど表ではいえない」を代弁しますのでぜひ読んでみてください。
・時間が取れなくて病院の都合ばかり押し付けてしまう
・医療ソーシャルワーカーは病院の追い出し屋って思われていないか不安
・追い出し屋にならないためのアセスメント技法を教えて
医療ソーシャルワーカー(以下MSW)は病院にとって重要な専門職ですが、時に病院組織の都合等でクライエントの退院支援を促進しければならない場合があります。
私は約3年間二次救急の地域医療支援病院でMSWをした後に、現在は三次救急の地域医療支援病院でMSWをしています。
当記事では病院の「追い出し屋」にならないための話し方についてソーシャルワークとは別の視点の書籍を用いて具体的に解説します。
この記事を読めば、医療ソーシャルワーカーが「追い出し屋にならないための話し方」がわかります。
病院の「追い出し屋」にならないためには雑談力を磨くことが重要です。ソーシャルワークと雑談力は一見対極なイメージにみえますが、実は面白いくらい関連性がありました。

Kei
ソーシャルワークの生命線ともいえるアセスメント能力を向上する方法がなかなか可視化されていない中で、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
雑談は意味のないムダ話として片付けてしまうのはもったいない⁉︎

みなさんは「雑談」についてどんなイメージがありますか?
「あたりさわりのない話をして場を持たせること」「どうでもいいことを、おもしろおかしく話すこと」
おおよそこのようなイメージを抱いているほとが少なくないと思います。
超一流の雑談力を身につければ、アセスメントに役立つ⁉︎
私が参考にした本の著者である安田正さんは、雑談のレベルが高まると以下のことが起きるとおっしゃっています。
- 自分に対する印象や評価がガラッと変わる
- 仕事が驚くほどやりやすくなり、成果も上がる
- 苦手な人がどんどん減っていき、人間関係で悩まされなくなる
- どんな場所にも顔を出すことができるようになり、よい縁にも恵まれる
- チャンスにも恵まれるので「食うに困る」ことがない
- 表情や気持ちが明るくなってきて、人生が充実しているように感じられる
この本を読んで私は思いました。
「これはソーシャルワークのアセスメントにいかせるのではないか!?」と。
MSWは、対人援助職であるためバーンアウトを起こしやすいとされています。
雑談力の技術を身につけることで、仕事やプライベートにおける人間関係のストレスを少しでも軽減できればいいなと考えております。
≫ 病院における医療ソーシャルワーカーがバーンアウトする原因
ソーシャルワークにおけるアセスメントとは?
アセスメントは、様々な問題の中から、相談援助の対象とする問題を選定するために、利用者や家族、関係者等から情報収集、問題分析を行なって問題の原因を究明します。
クライエントが「どのような人」で「どのような環境」で「どのような問題」を抱えて、その問題を「どのように認識」して(できず)「どのように対処」して(できずに)いるのか。そのような問題を「どのように評価」して「どうしたい」と考えているのか等を把握していくプロセスであり、その過程における一つひとつの情報です。
それらを統合した上で、見えてくる「クライエント像」に対してアプローチを行います。
これらの情報収集をする際に、雑談力は大きな武器になることが判明しました。
たった一回の雑談でラポールを築く

MSWにとってコミュニケーションが苦手な人は致命的です…といいたいところですが、私は苦手でも良いのではないかと思っています。
仕事のときだけ、MSWを演じれば良いのです。
MSWも人間です。コミュニケーションが得意な人もいれば、不得意な人もいます。クライエントと接しているときだけ、「コミュ力お化け」のスイッチを入れるくらいがメリハリがでて良いかも知れません。
人は初めて出会った相手を最初の2秒で判断する
アメリカの心理学者、ティモシー・ウィルソンは、「人は初めて出会った相手、最初の2秒で値踏みする」と提唱しました。
いかに人格が素晴らしくても、能力が高くとも、そのことが見た目にあらわれていなければ、人には伝わらないのです。
人間の視覚情報でわかりやすいのは表情と見た目です。
表情と見た目を見て、「正直そう」「優しそう」「頼りなさげ」「暗そう」といったおおよその印象を2秒で作ります。会った印象で、好き嫌いのだいたいの印象は決まってしまうということです。
ソーシャルワーク実践においても、表情と見た目は重要
ソーシャルワークにおいて、信頼関係は非常に大切です。限られた時間のなかで、ソーシャルワークを展開するための信頼関係を構築するにあたり、第一印象は欠かせません。
結論とすると「笑顔」と「服装」と「身だしなみ」が大事なんです。これで悪い印象をもつ人のほうが少ないでしょう。
このことから、MSWの面接をクライエントは「加点方式ではなく、減点方式で採点している」と捉えることができます。
会った最初の印象から減点されたらたまったもんじゃありませんよね。
ソーシャルワークの面接技術は「笑顔(礼儀正しさ、親しみやすさ)」と「服装」と「身だしなみ」といった「当たり前なことをサボらない」ことが重要であることがわかります。

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「思わず心を許してしまう聞き方」は技術で会得できる

雑談力の本質は、「きく力」です。雑談をうまく広げるためには相手に対する聞き方が非常に重要です。
ソーシャルワークを展開する中でも、相手のニーズを把握する際も同等です。
「聞く」「聴く」「訊く」を使い分けながらクライエントの生活像をアセスメントしていくことがソーシャルワークには欠かせません。
「なるほどですね」「そうですね」は話を聞いていない人の反応
うなずき方や質問の仕方など、雑談をうまく広げるには相手に対する「聞き方」が非常に重要です。
質問の仕方一つでその後の会話の広がり方が変わってきますし、何よりも人は「自分の話を聞いてもらえると安心する」「嬉しくなる」生き物です。
自分が話すことに気を取られるのではなく、聞き方を洗練させていくことで、雑談の質、コミュニケーションの質が高まっていいきます。

あ〜なるほどですね!

そうですね〜!
人と人がコミュニケーションをとる中で、頻繁に耳にするリアクションです。このようなあいづちは避ける方が無難です。
違和感のある言い方ですし、「話を本当に聞いているのか?」と不信感を抱かせてしまうでしょう。相手によっては、不快感を与えてしまうフレーズです。
良いあいづちは以下のようにすることが推奨されています。
あいづちの「さしすせそ」
- 「さ=さすがですね」
- 「し=知らなかったです」
- 「す=素敵です」
- 「せ=センスがいいですね」
- 「そ=それはすごいですね」
全てこれにならう必要はありませんが、共通するのは、「相手の話に価値がある」というというリアクションを取るということです。
これらのあいづちに、否定をする要素が一切ないのもポイントです。
ソーシャルワークにおいてもクライエントのエンパワメントを引き出すために、これらのリアクションは重要であるといえます。
このあいづちの「さしすせそ」は恋愛においても積極的に活用できます。雑談は、ソーシャルワークの技術を身につけながらモテる技術も学べる。一石二鳥ですね。下記の記事で詳細に解説しています。
「なるほどですね」「そうですね」に代わる援助技術はオウム返し
先述した「なるほどですね」、「そうですね」は避けたほうが無難と言及しましたが、この理由としては、会話を無条件で止めてしまうことにあります。
会話が止まってしまうため、「違和感」を感じやすくなります。
会話の流れを止めないテクニックとしては「オウム返し」が有効です。

母は独居で生活しています。

お母様は独居で生活されているのですね。
典型的なオウム返しの技法ですが、質問形式で返すなどして話が広がりそうな言葉を付け加えることで、違和感なくクライエントの情報を収集できます。

母と2人で生活しています。

お母様は独居で生活されているんですね。独居が継続できている秘訣はなんですか?
このような具合に、オウム返しをすることで、ソーシャルワークを展開する上で必要な情報を、クライエントの方から詳細に説明してもらえるでしょう。
オウム返しのテクニックに関しては、以下の記事でも紹介させていただきました。
≫ 現場では教えてくれない援助技術!面接の際に活用できる心理学6選
ニーズのを引き出すには「聞き方」が重要
ソーシャルワークにおいて、MSWが「追い出し屋」に認定されるひとつにクライエントのニーズを引き出せないことが挙げられます。
私個人の見解ですが、ニーズを引き出すことは、どんな手段でも構わないと思っています。
この雑談の技術を把握した上でソーシャルワーク実践をすると、「クライエントを騙している感覚」に陥る感覚が芽生えるかもしれませんが、それは違います。
コミュニケーション能力が高い人は、様々な技術を用いて、話し方、聞き方を練習しています。
つまり、コミュニケーション能力は、天性のものではなく、会得できるものです。
先述した、あいづちの「さしすせそ」は、分厚い社会福祉士の参考書や教科書には書いてありませんが今日から簡単に実践できます。
あいづちの「さしすせそ」を実践した結果はダイレクトに、面接をしたソーシャルワーカー自身で感じることができるでしょう。
雑談から本題への移り方〜病院の追い出し屋にならないために〜

雑談を展開した上で、MSWが「追い出し屋」にならない話し方について、解説していきます。
MSWにとって欠かせない、ネゴシエーション(交渉)を展開するためには、雑談を通して自分の伝えたいことをいかに上手く打ち出していくかが重要です。
雑談でできた雰囲気をそのままで本題へ
MSWが「追い出し屋」にならないための最大のポイントは、「それまでの雑談の流れのまま本題に入る」と言うことです。
「ところで本日は〜」「それで今日なんですが…」のような会話に流れに「間」を作ってしまいがちです。
これでは「会話の流れを断ち切る」ことになり、少し不穏な空気が流れてしまいます。相手も緊張してしまい、話を警戒される可能性が高くなるのです。
あくまでも自然な流れで、

お話を伺っていて、お力になれると思ったのですが

実は、私どもも同じことを考えておりまして……
など、自然と本題に入るためのフレーズを身につけておきましょう。
MSWの現場は、ポジティブな話ばかり飛び交う環境ではありません。病院という環境の特性上、様々なリスクをクライエントにお伝えしなけれなばならないため、コミュニケーションの内容はネガティブな内容になりがちです。
ネガティブな内容を伝える際は、雰囲気を少しでも緩和するために、雑談で構築してきた信頼関係をそのままに本題が伝えられることが望ましいです。
雑談から得た情報で本題と相手の話との接点を探す
雑談から本題への自然な移行の最大のコツは、「あくまでも雑談からヒントを得た体」で行うことです。
「準備万端で今この話をしています!」のスタンスよりも、「今あなたの持っている課題に対して提案できるものが、そういえばありました!」のスタンスの方が、受け手としては気が楽です。
大事なのは事前のシミュレーションをしておくことです。
具体的には、自分がしたい「本題の内容」から連想されるキーワードをピックアップしておきます。そして、相手と雑談しながら、事前に用意したキーワードと相手の言葉をリンクさせていくのです。
雑談は自己決定の後押しに活用できる
例えば、70代男性で、元々自宅で生活されていましたが、脳血管疾患によって意思疎通困難で排泄が全介助になってしまった患者さんがいたとします。
客観的にみると、自宅以外の退院先も、MSWとしては頭をよぎりますが、あくまでも相談相手からでた言葉をうまくリンクさせていくことが重要です。

ご本人様は、排泄が全介助になってしまい、意思疎通が困難な状況にあります。
おむつの交換は今後できそうですか?

私は日中仕事をしていて帰るのが遅いんです。おむつの交換はできそうにありません。
自宅への退院は難しいかもしれません。

仕事をされていては、自宅で介護するのは難しいですよね。
実は、私どもも同じことを考えておりまして、自宅以外の退院先を視野に入れることも考えられたらなと思っていたんですよね。
「元々の自宅へ退院することに関しての妻の考え」の聴取をメインにしつつ、雑談を通して妻の生活状況や、子の有無など様々なことをアセスメントした上での結果です。自宅に小学生の孫が2人いる」ことや、「築50年の家で自宅が段差だらけ」ということも、当たり障りなく把握することができました。
最初から「自宅退院は難しいのではないですか?」とこれまでの雑談を無視して切り込むのではなく「おむつ交換」を自宅退院できるかどうかの指標にしました。
おむつ交換ができれば、「在宅」で、おむつ交換ができなければ「介護施設等で」と選択肢を増やしていきます。
意思決定をしているのが「妻」であることが重要なポイントで、決してMSWが意思決定を誘導しているようにはみえないはずです。「妻」自身が意思決定をしたことにより、妻の責任感も生まれます。
「病院が提案した」構図になると、どこか人任せになってしまい、妻の責任感が薄れてしまいます。クライエントの「自己決定」の構図を作ることが非常に重要です。

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この記事のまとめ 雑談を制するものは、バイステックの7原則を制する

社会福祉士国家試験の頻出問題で、バイステックの7原則という援助者が遵守するべき原則があります。
バイステックの7原則
個別化
援助者は、利用者の問題の状況に応じて、個別的に対応する。
意図的な感情表現
援助者は、利用者が気持ちを自由に表現できるように働きかける。
統制された情緒的関与
援助者は、利用者に対する自らの感情を吟味して応じる。
受容
援助者は、利用者のありのままを受け入れる。但し、利用者の逸脱した態度や行動などに同調し、許容するのではなく、そのような行動を現実の一部として認識し、理解するということである。
非審判的態度
援助者は、利用者の言動を批判・攻撃したり、援助者の価値観や、倫理観を利用者に押しつけたりしない。
自己決定
援助者は、利用者が自らの意思に基づいて決定できるように援助する。
秘密保持
援助者は、援助関係の中で知り得た利用者の情報を、利用者の意思に反して第三者に漏らしてはならない。
ケースワークの原則 フェリックス・P. バイステック
雑談をソーシャルワーク落とし込むことで、初任者のMSWでも、面接の立ち回りを可視化して伝えることができると考えています。
バイステックの7原則は医療福祉関係者にとって馴染み深い原則ですが、いままで具体的に可視化、言語化されてきませんでした。
それは、対人援助の根底にある「クライエントによる(個別化)」という考え方が邪魔をして、可視化、言語化が避けられてきているのだと考えています。
その結果、初任者のMSWが職場に就職しても、地に足をつけることができずに退職してしまうのではないでしょうか。私は、数々の先輩から様々なことを教えてもらいましたが、違和感を感じたワードがあります。

経験して慣れていくしかないよ
初任者のMSWからしたら、こんなわかりにくいゴールの指標なんてありません。私からすれば、「教えることはできないから、自分で勉強して身につけてね」と言われているように感じてしまいます。
対人援助を教えることは確かに難しいですが、いままで感覚で実践してきたが故に教えられず、自己学習に依存させた結果が、「社会福祉士の質の低下」「社会福祉士の価値の低下」を招いているのではないでしょうか。
ソーシャルワークを伝えていく方法・手段を延々と議論していても、実行に移さなければPDCAサイクルはまわせません。質の良い議論を幾度重ねても、発信されて世の中の役に立っていなければ、その議論は単なる「愚痴」と化します。
社会福祉士という資格自体が既に「ジェネラル」ですので様々な意見があって当たり前です。否定するのではなく、比定することがの社会福祉士に求められることです。
今回は「医療ソーシャルワーカーが追い出し屋にならないための話し方」について解説しました。追い出し屋にならない話し方も重要ですが、それをもって「面接をどのように組み立てていくか」がさらに重要です。
以下の記事では「病院の「追い出し屋」と思わせない医療ソーシャルワーカーの面接技法」について解説しているのでこちらの記事もぜひ併せて読んでみてください。
noteではブログでは発信できないソーシャルワーカーの実践について具体的かつ論理的に解説していますので「ソーシャルワーカーの業務を可視化したい」という方は必見になります。

本を活用して勉強することもオススメです。以下の本は一見ソーシャルワークとかけ離れたように感じますが、今回のブログの参考文献として利用しました。社会福祉士に必要な「ニーズの引き出し方」を学びたいう方は、こちらもぜひご検討ください。
もっとソーシャルワークをカジュアルに学べるブログを生成できれば良いなと思っています。
ぜひ読んで、価値観の引き出しにしてもらえたら良いなと思っています。
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