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noteを2023年11月から始めました。ブログでは発信できない医療ソーシャルワーカーのタブーを表面化していこうと考えています。「MSWってこうだけど表ではいえない」を代弁しますのでぜひ読んでみてください。
いまの社会福祉士の働き方やお給料で、将来うまれてくるかも知れない自分の子どもに誇らしく、「社会福祉士になったほうがいいよ!」なんていえない。
— Kei@社会福祉士 (@kei5850) April 28, 2023
少しでもいえるように、変えていかなければならない。
医療ソーシャルワーカー(以下、MSW)として就職したものの「将来この仕事でずっと食べていけるか不安」と考えている人は非常に多いです。
私は「MSWとして病院へ就職して5年間以上働いている経験」「高度急性期の病院で培ったノウハウ」「スーパービジョンを通した諸先輩方からの教育」があります。
そこでこの記事では、社会福祉士として様々な働き方を模索している中で、「MSWの将来性と年収はどうなるのか」をKei独自の視点から解説していきます。
この記事を読めば参考書では忖度が伴って解説されない「MSWの収入はどうなっていくのか」「MSWの仕事の将来性」が全てわかります。
MSWとして5年以上働いて培った経験をもとに考察してみるとMSWの将来性は伸び代しかないことがわかりましたので、MSWの将来性に悩んでいる人は最後まで読んでください。
MSWの将来的な収入の考察

公益社団法人日本医療ソーシャルワーカー協会のホームページによれば、2023年3月24日現在の会員は、5,398人とのことでした。
このほかに、福祉医療機構が運営するWAM NETによると、2017年10月現在で医療施設で働く社会福祉士、精神保健福祉士、医療社会事業従事者の数は27,562人とされています。
MSWの収入について、公益財団法人社会福祉振興・試験センターにおける令和2年度(2020年)社会福祉士収容状況調査を踏まえて考察していきます。
病院におけるMSWの給料は上がらない
結論からいうと、病院におけるMSWの給料は上がりそうにありません。理由は、病院におけるMSWの立場にあります。
病院の運営において、医師と看護師の確保は重大な任務であることは明確だと思いますが、MSWは「絶対に病院に必要」といえるポジションを確立していません。
病院によっては、MSWが採用されていない病院もあります。
ブログを読んで頂いているみなさんが、病院を経営する管理者だと仮定しましょう。
医師、看護師の人数を確保した後、真っ先にMSWを採用しますか?薬剤師や、事務員より先にMSWの確保を優先しますか?
MSWの採用は、病院の運営を考慮すると、優先順位は低くなるのではないでしょうか。
優先順位の高い職種の待遇が高くなるのは必然です。このことを踏まえると、病院に採用されているMSWの収入がこの数年間で著しく上がる可能性は低いと言えるでしょう。
病院の運営に必要不可欠な看護師が、この数年でようやく処遇の改善に向かっている現状(看護職員等処遇改善事業)をみると、MSWの処遇が改善されるのは、まだまだ先でしょう。
MSWは性質上非常勤やパートに向いていない
医師や看護師は患者さんの「身体」に向けての支援がメインになることが多いため、非常勤やパートとして採用されている方も多いでしょう。
それは、診断名や検査データなど、ガイドラインにおける明確なルールが設定されているため、比較的スムーズに引き継ぎができます。
一方で、MSWはクライエントの心理・社会的問題に対してアプローチを行う専門職です。
マニュアルがあったとしても細かな個人の解釈に差異があり、関わった MSW の感覚が追加されているため、別のMSW が同じようにケースを進めても、微妙なズレが生じることがあります。
クライエントとの信頼関係や、関係機関との連絡調整のニュアンスもデリケートな部分であり、別のMSW のケースを引き継ぐときは、非常に慎重になります。

引き継ぎを行うことが難しいMSWは、非常勤やパートで副収入を得ることは難しいといえます。
病院にMSWを増員することは、年々難しくなっています。
特に「公立病院」におけるMSWは、非正規雇用の採用が多い傾向にあります。医師や看護師は常勤で採用することが多いですが、公立病院的におけるMSWの評価は低いようです。
少なくとも公立病院はMSWを「人件費のコストカット対象」にしていることが、残念でなりません。
社会福祉士専門の求人サイトができたとしても需要が少ない
病院におけるMSWの配置人数は、入退院支援加算1における施設基準において、以下のように記載されています。
入退院支援及び地域連携業務に専従する看護師又は社会福祉士が、当該加算の算定対象となる 各病棟(1人につき2病棟、計120床までに限る。)に専任で配置されている。
入退院支援加算1厚生局自己点検事項より引用
極端な話になりますが、東西1病棟ずつの合計2病棟で、120床の病院で入退院支援加算1を算定する場合、MSW (社会福祉士)の採用は1名でよいということになります。
このことから、小規模の病院はMSWを多く採用する必要がありません。
看護師や介護士のような肉体労働ではないため、ローテーションを考慮して多く採用されることはなく、必然的に採用人数は少なくなります。
慢性的に人員を必要とする看護師や介護士と比較すると、MSWはもちろん、社会福祉士全体の求人が少ない傾向にあり、満足できるお給料の職場に巡り会えません。
社会福祉士という仕事全般にいえることですが、求人が少ないのは以下のことが考えられます。
MSWの専門性の担保はまだまだ個人に依存する傾向が強い

組織において、MSWという専門職の質が、今後も担保されるかどうかを考察します。
個人の見解になることをご承知の上で読んでください。
職能団体との関わり方
MSWの質の担保は、MSWの職能団体である日本医療ソーシャルワーカー協会が担うべき業務であるということは広く知られており、実際に私も会員です。
同時に私は社会福祉士でもあるため、日本社会福祉士会にも入会する権利がありますが、会員ではありません。
ソーシャルワーカーの職能団体は、大きく分けて4つあります。
- 公益社団法人日本社会福祉士会
- 公益社団法人日本精神保健福祉士会
- 公益社団法人日本医療ソーシャルワーカー協会
- 特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会
それぞれの職能団体に歴史と伝統があるため、存在に異議を唱えるつもりはありません。
しかし、ソーシャルワーカーの価値を高めるためには、何らかの形で一つの団体として統合することも選択肢なのではないかと考えることもできます。
→上記4団体で日本ソーシャルワーカー連盟(JFSW)が設立されています。
国に対して収入の改善や、新たな社会福祉士の診療報酬明記等のソーシャルアクションを起こしていく際に、職能団体は欠かせません。
ソーシャルワーカーの質を担保するためにも、職能団体の活動は可視化される必要がある思います。
病院組織内におけるMSWの専門性の認識は低い
病院組織内でのMSWは、患者に直接触れることがないため、病院組織内のヒエラルキーでは下層部になりがちです。
医師や看護師等にMSWって何をする人?と尋ねると以下の回答が少なくありません。

転院調整をする人

介護保険の説明とか身寄りのない人に対して介入する人
病院におけるMSWの専門性が認知されているとは言い難いです。
MSWの専門性を病院内外で広める必要があるということは、先述した通り収入の早期改善は非現実的と言えます。
認定制度の普及
認定社会福祉士、認定医療ソーシャルワーカー、救急認定ソーシャルワーカーなどの資格が存在していますが、私の周囲には上記の資格を取得したいと言っている人は少ないです。
理由として、周りが口を揃えていう言葉があります。
「資格取得にお金がかかるし、資格取得しても給料が上がらない」
上記のセリフを一言でまとめると、認定制度の価値が、MSWの中で高いとはいえないということです。
- 認定資格の申請料等が資格取得後の価値に現時点で見合っていない
- 認定看護師のような収入が上がる仕組みがない
- 認定資格を取得しても、取得後のリターンが少ない
価値に見合う資格になれば、自ずと認定資格に挑戦する人が増えるのではないかと考えます。
具体的には、以下の2つを推奨します。
- 資格手当がつく
- 診療報酬に明記され、施設基準として必要な資格になる
端的にいうと、認定制度の資格を所持していることで、どれだけの「金銭」を生み出せるか。
これこそが、資格に価値を持たせるための極めて重要な要件であると思います。
綺麗事は一切抜きで「苦労して取得した資格が1円も生み出さない」なんてそんな悲しいことあってはならないと思います。
認定資格取得後のMSWへ、具体的な報酬のリターンを付与するためにも、ソーシャルワーカーの職能団体を中心に価値を高めてほしいです。
MSWの業務としての需要はある!

ここまで書いてきた私自身がビックリするほど、ネガティブな話が続きました。MSWの仕事は将来的に真っ暗なのかと問われると、需要は増すばかりでしょう。
改めてソーシャルワークという学問を復習しておきましょう。
ソーシャルワークは、社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエンパワ メントと解放を促進する、実践に基づいた専門職であり学問である。
社会正義、 人権、集団的責任、および多様性尊重の諸原理は、ソーシャルワークの中核をな す。ソーシャルワークの理論、社会学科、人文学、および地域・民族固有の知を 基礎として、ソーシャルワークは、生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう、人々やさまざまな構造に働きかける。
「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」
人工知能(AI)でソーシャルワークはできない
ソーシャルワークという学問を、人工知能が再現することはほぼ不可能です。人工知能でソーシャルワークが行えるのであれば、それに越したことはありません。
例えば、75歳女性、大腿骨頸部骨折手術直後の患者さんがいたとします。
人工知能であれば、恐らく近隣の回復期リハビリテーション病棟のある病院への転院を提案してくるでしょう。

同居家族に理学療法士がいるし、元々ADL自立だからリハビリ次第で自宅退院ができるかも?

近隣の在宅強化型老健に知り合いがいるからそこへ入所したいっていうかも?
上記のように、生活環境や地域によって患者さんの支援は変化するため、詳細な部分までアセスメントできるMSWのほうが、人工知能より優れていると言えます。
ソーシャルワークは高齢化社会にマッチする学問である
多くの人がご存知の通り、日本は深刻な高齢化が問題となっています。
ソーシャルワークという学問と、高齢化社会は非常に相性が良いといえます。
加齢によって体力や行動範囲が落ちてくるのは必然的ですが、その中でも、その人なりのウェルビーイングを追求することは、その人の生きがいに繋がります。
ソーシャルワークがSDGsを展開する架け橋となる!
MSWは、ソーシャルインクルージョン(社会的包摂)とういう概念をもって日々の業務にあたる義務があります。
あらゆる差別、貧困、抑圧、排除、無関心、暴力、 環境破壊などに対して、専門的な視点から関心を持つ。
あらゆる差別、貧困、抑圧、排除、無関心、暴力、 環境破壊などを認識した場合は、専門的な視点と方法により、解決に努める。
専門的な視点と方法により、クライエントの状況と ニーズを社会に発信し、ソーシャル・インクルージョンの実現に努める。
公益社団法人日本医療ソーシャルワーカー協会 医療ソーシャルワーカー行動基準
これは、世界中で推奨されている持続可能な開発目標(SustainableDevelopmentGoals:SDGs)の解釈と一致します。
「格差」「自然災害」といった新たに顕在化してきた課題を含め、「貧困の撲滅」と「持続可能な経済・社会・環境の実現」を目的に世界で定められています。
SDGsは途上国だけでなく、先進国も含めたすべての国が取り組むべき17の目標と169のターゲットが定められた国際目標です。
「ソーシャルインクルージョン」「SDGs」双方が掲げる「誰一人取り残さない社会を目指す」という理念が一致しています。
社会福祉士の考え方は、SDGsが追い風となって時代に適合してきています。
SDGsを普及させる担い手として、社会福祉士が活躍できる環境になっていくでしょう。
この記事のまとめ MSWの将来は伸び代しかない

MSWの将来に関しては、ネガティブな要素も多くありました。しかし、ポジティブに捉えれば、伸び代も十分にあるということです。
MSWの需要は間違いなくあります。需要と供給のバランスを上手く保つことが今後、MSWの人数を増やすために必要不可欠になるでしょう。MSW一人ひとりの発信が、MSWの価値を高めていくことに繋がります。
今回は「現役MSWが給料と年収」について解説しました。MSWの将来性も重要ですが、社会福祉士全体の将来性はさらに重要です。
以下の記事では「社会福祉士の需要と将来性」について解説しているので、こちらの記事もぜひ併せて読んでみてください。
noteではMSWに関する具体的な「調整技術」について詳細に解説しています。
MSWが病院でソーシャルワークを実践するには、ソーシャルワークを実践するための「時間」を確保することが重要です。入院期間という限られた期間内で時間をを作るには個人や組織、地域との「調整技術」を磨く必要があります。
noteではMSWの実践で役立つ交渉術や立ち回り、考え方を具体的に解説していますので、ソーシャルワークを展開するための面接や連絡調整における様々な技術を参考にしていただければ幸いです。

本で知識を深めるのもオススメです。以下の本はMSWをする上で私が欠かすことのできない2冊です。
この2つの本は、MSWとして臨床している際に、何度も読み返すくらいオススメなのでぜひこちらもご検討ください。
医療福祉総合ガイドブックは、MSWが日々の臨床で利用する様々な社会資源が解説されており、曖昧になった知識の復習に役立ちます。
マンガでわかる介護入門は、MSWが生涯説明する社会資源No. 1である介護保険制度についての本で、説明回数が多いが故に、怠惰になりがちな心をリセットできる本です。
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