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【2024年最新】病院の社会福祉士に関する診療報酬上の加算を現役医療ソーシャルワーカーが解説

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noteを2023年11月から始めました。ブログでは発信できない医療ソーシャルワーカーのタブーを表面化していこうと考えています。「MSWってこうだけど表ではいえない」を代弁しますのでぜひ読んでみてください。

この記事では上記のポストを深掘りしつつ、医療ソーシャルワーカー(以下、MSW)と診療報酬の関係性について解説します。

病院におけるMSWの活躍が評価されはじめた要因として、社会福祉士が診療報酬上に明記されたことが大きいです。

私はMSWとして5年以上病院で働いており、診療報酬が改定される度に社会福祉士に関する診療報酬の届出をする役割を組織内で担ってきました。

当記事では、病院のMSWに関する診療報酬上の加算の意義について詳細に解説します。この記事を読めば社会福祉士の診療報酬に関する歴史の全てがわかります。

社会福祉士が診療報酬上に明記される意義は、病院のMSWが組織内で立場を確立するために、必要不可欠です。

Kei
Kei

ここからはMSWを、診療報酬上で明記されている「社会福祉士」で統一します。

診療報酬に社会福祉士が明記される意義

医療機関における診療報酬とは、保険診療の際に医療行為等の対価として算定される報酬のことをいいます。

診療報酬点数表に基づいて計算され、点数で表現されます。診療報酬改定は2年に1度行われます。

診療報酬上に社会福祉士が明記される意義が顕著に現れるポイントを3つ解説します。

専門職としての地位を確立できる

病院には医師を筆頭に様々な専門職が混在します。その専門職に対して「社会福祉士という専門職の視点」で意見を発信することはチーム医療に大きな意味があります。

社会福祉士が診療報酬に明記されたことにより、国が社会福祉士を医療機関の専門職として認めている証明となり組織内の地位を確立することに繋がります。

具体的な例として、認知症ケア加算1や回復期リハビリテーション病棟入院基本料1の施設基準等で社会福祉士の配置が必要とされており、専門職としての意見を発信する後ろ盾になります。

病院における社会福祉士の地位確立はまだまだ不十分です。下記の記事で社会福祉士が普及しない理由について解説しています。

≫ 社会福祉士が28万人以上登録されても普及しない本当の理由

組織として社会福祉士を採用しやすくなる

社会福祉士が診療報酬上に明記されていなかった時代は、事務員と同じ括りになることが多く、採用しても病院側に大きなメリットがないため、積極的な採用に至りませんでした。

Kei
Kei

考え方次第では、人件費しか生まない職員になります。

診療報酬上で社会福祉士が明記されている昨今は、診療報酬を生成し専門職として病院に貢献することが可能となり、病院の経営陣が積極的な採用を検討できます。

事実として、社会福祉士が診療報酬上に明記されてから、社会福祉士を採用する病院が増加しました。

需要が増えている医療分野の社会福祉士として活躍したい方は、下記の記事を参考にしてください。

≫ 医療ソーシャルワーカー転職完全ガイド

「地域完結型」の医療に貢献できる

社会福祉士は「医療専門職」ではなく「福祉専門職」であるため、病院経営陣からすると「患者さんに触れない社会福祉士が役に立つのか?」という疑問の声がありました。

近年の医療ニーズは、社会情勢の変化に伴い病気を治すこを目標とする医学モデルに依存した対応では国の医療体制を維持できなくなりました。

高齢化が進行し、医学モデルでは対処できない心理的・社会的課題等の解決が顕在化するにつれて、社会福祉士の必要性が確立され、診療報酬に明記されたという背景があります。

≫ 医療分野における社会福祉士の役割と現実

国の医療体制は「病院完結型」の医療から「地域完結型」の医療への転換を推進しています。

「地域完結型」の医療を展開するために、地域の社会資源を詳細に把握している社会福祉士の需要がら高まっているといえます。

社会福祉士が携わる診療報酬の歴史

社会福祉士が病院に配置されることによって「どのように国民の利益として還元されるのか」を国(主に厚生労働省)と歴代の先輩社会福祉士が交渉を重ねて、社会福祉士が明記されることになりました。

後の入退院支援加算の先駆けとなる「退院調整加算」です。

平成20年度診療報酬改定 はじめて社会福祉士が明記される!

平成20年度診療報酬改定は、社会福祉士にとって歴史に残る改定です。

「退院調整加算」は、診療報酬上で社会福祉士がはじめて評価された記念すべき加算です。

入院患者の退院に係る部門が設置されており、退院調整の経験を有する「専従」の看護師または社会福祉士が1名上配置することが条件とされていました。

「専従」とは、専らその業務に従事するという意味で、他の業務との兼任はできません。

例えば、現行の回復期リハビリテーション病棟入院料1を算定している病院は実務経験3年以上の社会福祉士を「専従」で配置するとされています。

回復期リハビリテーション病棟における業務以外は基本的にしてはいけないという位置付けです。

Kei
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類似した表現で「専任」という表現がありますが、「専任」は他の業務との兼任が可能です。

平成22年度診療報酬改定 「介護支援連携指導料」創設!

平成22年度診療報酬改定は、退院調整加算の範囲が拡大しました。

具体的には、新生児、急性期・慢性期病棟等での退院調整が加算として認められました。

「介護支援連携指導料」がはじめて明記された改定でもあります。

介護支援連携指導料は、入院中の患者に対して、患者の同意を得て、医師または医師の指示を受けた看護師、社会福祉士等が、介護支援専門員(ケアマネ)と共同して、導入が望ましい介護サービスについて説明及び指導を行なった場合に算定ができます。

現在は「介護支援等連携指導料」に改名されており、障害分野の相談支援専門員が算定が可能になるなど、対象範囲が拡大しており、入院中2回まで算定可能です。

栄養サポートチーム加算や、がん患者リハビリ料においても、チーム医療推進の観点から社会福祉士が施設基準に明記されました。

平成24年度診療報酬改定 「患者サポート体制充実加算」の専門職へ仲間入り

平成24年度診療報酬改定「患者サポート体制充実加算」に社会福祉士が施設基準に明記されます。

患者さんからの相談窓口を設置し、専任の医師、看護師、薬剤師、社会福祉士またはその他の医療有資格者等が、勤務時間内において常勤で1名以上配置されている且つ、患者さんの相談内容に適切な対応ができる体制をとっていることが条件です。

退院調整加算1、2が創設され、回復期リハビリテーション病棟入院料1の施設基準に「専任」の社会福祉士配置が明記されました。

平成26年度診療報酬改定 社会福祉士の「専従」配置が明記される!

平成26年度診療報酬改定「専従」の社会福祉士設置が明記されたことによって、社会福祉士の価値が一層上がりました。

回復期リハビリテーション病棟入院料1の新たな施設基準として、退院調整に関する3年以上の経験を有する「専従」の常勤社会福祉士1名以上の配置が明記されました。

Kei
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ケアミックスの病院が、複数の社会福祉士の採用を前向きに検討することになるきっかけになった改定です。

「退院調整に関する3年以上の経験を有する」とありますが、この経験は回復期リハビリテーション病棟にでなくてもよいとされています。

この改定で地域包括ケア病棟(病床)が創設されました。

地域包括ケア病棟は、専従の常勤理学療法士が必須であり、常勤作業療法士または常勤言語聴覚士1名以上及び「専任」の在宅復帰支援担当者1人以上(職種の規定はないが、社会福祉士のような在宅復帰支援に関する業務を適切に実施できる者)が配置されていることを施設基準としています。

平成28年度診療報酬改定 「退院支援加算」により社会福祉士の価値上昇

平成28年度診療報酬改定は、退院支援に関する評価を充実させるために「退院調整加算」が「退院支援加算」にモデルチェンジされます。

退院支援加算1

イ 一般病棟入院基本料等の場合 600点

ロ 療養病棟入院基本料の場合 1,200点

患者さんが、安心・納得して退院し、早期に住み慣れた地域で療養や生活を継続できるように、退院支援の積極的な取り組みや、医療機関間の連携等を推進するための評価として、新設されました。

簡易的に解釈すると「職員の病棟配置や、連携体制の確立を国は評価する」といった加算です。

算定要件・施設基準は下記のとおりです。従来の退院調整加算では触れませんでしたが、現在の入退院支援加算と類似した部分も多いため、解説します。

  • 3日以内に退院困難な患者を抽出(スクリーニング)
  • 7日以内に患者・家族と面談
  • 7日以内にカンファレンスを実施、計画書作成
  • 「専従」1(看護師又は社会福祉士)
  • 退院支援業務等に専従する職員を病棟に配置(2病棟に1名以上)
  • 連携する医療機関等(20か所以上)の職員と定期的な面会を実施(3回/年以上)
  • 介護支援専門員との連携実績

退院支援加算の新設によって、高い診療報酬の観点から、病院における社会福祉士の価値が飛躍的に上昇した改定だといえます。

退院後訪問指導料や、重症度の高い患者に対する訪問看護の質の担保を評価がされるなど、国が在宅医療を推進していく姿勢が伝わる改定でもありました。

平成30年度診療報酬改定 「退院支援加算」→「入退院支援加算」へ

平成30年度診療報酬改定「退院支援加算」が「入退院支援加算」としてマイナーチェンジされます。

入退院支援加算は、患者さんが安心、納得して退院し早期に住み慣れた地域で療養や生活を継続できるようにするための取り組みを評価した診療報酬とされています。

入退院支援加算の目的は、退院困難な要因を有する患者さんの抽出です。

社会福祉士に関する診療報酬の生命線である入退院支援加算1は、非常に複雑な内容ですが把握しておく必要があります。

入退院支援加算1
  • 入退院支援及び地域連携業務に「専従」する看護師または社会福祉士が、入退院支援加算1の算定対象に合っている各病棟に専任で配置されていること。
  • 病棟に「専任」の看護師または、社会福祉士が、入退院支援部門の「専従」の職員を兼ねることはできないが「専任」の職員を兼ねることは差し支えない。

「入退院支援加算1」上の位置付けは「入退院支援部門の専従であり、専任で病棟に配置されている」といった解釈です。

つまり「入退院支援の業務を専門で行いながら、その一貫として病棟の退院支援の業務もこなす」といった役割を担っています。

Kei
Kei

診療報酬の点数は、退院支援加算1と同等です。

入退院支援部門に配置されている看護師は、病棟に配置される「専任」の看護師を兼ねることはできません。

「入院前」からも患者への支援を適切に展開することを目的とした「入院時支援加算」が新設され、国は、入院前から質の高い支援が求めていることが読み取れます。

「在宅への早期退院を目指す支援」は「入院前の生活環境や加療状況等の生活状況の確認から始めることが重要である」ことが評価されました。

入院時支援加算の新設により、在宅から外来、外来から入院への流れを見直すきっかけとなった医療機関も多かったようです。

「入退院支援加算」「入院時支援加算」が創設されたことにより「退院調整」から「入退院支援」と名称を変えて、地域医療の考え方も変化してきています。

令和2年度診療報酬改定 「入退院支援加算」が2層構造になる

令和2年度診療報酬改定「総合評価加算」が入退院支援に組み込まれたことで、国はより一層チーム医療を展開することを推進していることが伺えます。

「総合評価加算」とは、介護保険サービス給付対象者の総合的な機能評価を行い、その結果を踏まえて支援を行った場合の評価として、新たに入退院支援加算の中に組み込まれました。

「総合的な機能評価」とは、「基本的な日常生活能力」「認知機能」「意欲」等について、支障がないかどうかを評価します。

「入退院支援加算」と「入院時支援加算」の「専従」•「専任」等の要件が緩和されました。

Kei
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「専従」•「専任」等の要件が緩和され、「施設基準を満たしやすくなった」くらいに解釈しておくのがよいでしょう。

令和4年度診療報酬改定 「入退院支援加算」の重要性が高まる

令和4年度診療報酬改定は「入退院支援加算」がさらに評価され診療報酬の点数が増加しました。

入退院支援加算1

イ 一般病棟入院基本料等の場合 700点

ロ 療養病棟入院基本料の場合 1,300点

入退院支援加算1の施設基準において、転院又は退院体制等に係る連携機関の数を「20以上から25以上」に変更され、地域との更なる連携を求められました。

現行の「入退院支援加算1」における「退院困難な患者を抽出(スクリーニング)」について要点を解説します。

入退院支援加算スクリーニング項目

ア 悪性腫瘍、認知症又は誤嚥性肺炎等の急性呼吸器感染症のいずれかであること

イ 緊急入院であること

ウ 要介護状態であるとの疑いがあるが要介護認定が未申請であること

エ 家族又は同居者から虐待を受けている又はその疑いがあること

オ 生活困窮者であること

カ 入院前に比べADLが低下し、退院後の生活様式の再編が必要であること(必要と推測されること)

キ 排泄に介助を要すること

ク 同居者の有無に関わらず、必要な養育又は介護を十分に提供できる状況にないこと

ケ 退院後に医療処置(胃瘻等の経管栄養法を含む)が必要なこと

コ 入退院を繰り返していること

サ 入院治療を行っても長期的な低栄養状態となることが見込まれること

シ 家族に対する介助や介護等を日常的に行っている児童等であること

ス 児童等の家族から、介助や介護等を日常的に受けていること

セ その他患者の状況から判断してアからスまでに準ずると認められる場合

令和4年度診療報酬改定で、下記の2つが項目に追加されました。

  • 家族に対する介助や介護等を日常的に行っている「児童等」であること
  • 児童等の家族から、介助や介護等を日常的に受けていること

要約すると「ヤングケアラー」及び「その家族」です。

ヤングケアラーに関しては、一般社団法人日本ケアラー連盟にて詳細に解説されています。

診療報酬に「ヤングケアラー」及び「その家族」が明記された理由として、医療機関は「潜在化しやすい生活課題が顕在化する場であること」があげられます。

病気や怪我によって、顕在化した生活課題に対してアプローチすることは、社会福祉士の重要な役割であり、ヤングケアラー支援もソーシャルハイリスクであるといえます。

≫ 急性期病院におけるソーシャルハイリスクへのアプローチ

社会福祉士と入退院支援加算のジレンマ

「入退院支援加算」のおかげで、社会福祉士を採用する病院は増加しました。

しかし、上記ポストのように、入退院支援加算がMSWのアイデンティティであるソーシャルワーク実践を阻害する要因になることがあります。

スクリーニング、面談、カンファレンスのハードルが高い

3日以内のスクリーニングチェックと7日以内の患者家族面談、カンファレンスを強いられる入退院支援加算1は算定要件が非常に厳しいです。

「退院支援計画書を作成する事務作業」に時間を要することが多く、各病院で対策が練られていることでしょう。

時間と事務作業に追われ、社会福祉士が得意とする「ソーシャルワーク」が満足に行えなくなるといった事案が発生しています。

社会福祉士の有効な時間の使い方については下記の記事で解説しています。

≫ 社会福祉士の専門性を磨く自己研鑽方法

転院又は退院体制等に係る連携機関を満たせない

都心の病院や、市街地の中心にある病院は気になることが少ないかも知れませんが、田舎の病院は連携期間の数字を満たすことができず、算定を諦めている病院が一定数あります。

田舎は病院や介護施設等が少なく、人材不足も相まって顔の見える連携が取りにくいとされています。

リモート等のオンラインを活用することが可能になったとはいえ、連携機関の絶対数が増加したため、病院や介護施設の数が少ない田舎は依然として厳しいでしょう。

地域との連携はネゴシエーション(交渉)が欠かせません。下記の記事で今日から使えるネゴシエーションを解説しています。

≫ 社会福祉士が行うネゴシエーションを心理学で応用して解説

上層部から数字ばかり求められてしまう

入退院支援加算を数多く算定しても、下記のような取り組みになると本末転倒です。

  • 曖昧なスクリーニング
  • してもしなくても差し支えない雑なカンファレンス
  • 個別性のない退院支援計画書

ソーシャルワークの質は、数字で表すことができません。

しかし、ソーシャルワークという学問を理解していない経営陣は、病院の収益を重視するため多くの算定件数を求められてしまう傾向にあります。

Kei
Kei

病院に雇用されている以上、組織の一員として利益が追求されることは重々承知されていると思いますが、苦しい部分でしょう。

社会福祉士は、上層部とクライエントの板挟みになることも少なくありません。下記の記事で「社会福祉士の板挟み」について解説しています。

≫ ミクロメゾマクロレベルで考える社会福祉士の板挟み

この記事のまとめ

病院の社会福祉士が評価されたのは「診療報酬に社会福祉士が明記された」ことが非常に大きいです。

歴代の諸先輩方が、国に社会福祉士を病院に配置することの重要性を粘り強く交渉していただいたおかげで、社会福祉士は病院という箱物で就労することが可能となりました。

診療報酬の理解は、病院機能の理解と同等に重要です。

診療報酬全てを把握することは難しいので、社会福祉士が携わっている診療報酬に関しては、把握できるようにしていきましょう。

noteではブログでは発信できないソーシャルワーカーの実践について具体的かつ論理的に解説していますので「ソーシャルワーカーの業務を可視化したい」という方は必見になります。

≫ MSWの9割が知らないクレーム前に必ず表出されるワード

社会福祉士に是非とも読んでほしい本が以下のものです。

この3冊の本は、ソーシャルワーク実践を行うなかで、何度も読み直しています。

医療福祉総合ガイドブックは、MSWが日々の臨床で利用する様々な社会資源が解説されており、曖昧になった知識の復習に役立ちます。

マンガでわかる介護入門は、MSWが生涯説明する社会資源No. 1である介護保険制度についての本で、説明回数が多いが故に、怠惰になりがちな心をリセットできる本です。

医療ソーシャルワーカーのための業務マネジメントガイドブック: 49の実践事例から学ぶは、個人的に一押しの本で、可視化されにくいソーシャルワークが具体的に表現されており、実践後の反省点もしっかりと記されているため、内容に説得力があります。

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