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noteを2023年11月から始めました。ブログでは発信できない医療ソーシャルワーカーのタブーを表面化していこうと考えています。「MSWってこうだけど表ではいえない」を代弁しますのでぜひ読んでみてください。
先日、以下のようなツイートをしたところ、多くの社会福祉士、精神保健福祉士、福祉関連団体のみなさまから共感をいただきました。
社会福祉士になってから「連携」という言葉が苦手になった。
— Kei@社会福祉士 (@kei5850) May 28, 2023
キャリアを重ねるごとに、軽はずみに「連携」と言えなくなってくるから。
社会福祉士は対人援助職であるため、様々な「板挟み」に悩まされます。
私の専門分野である医療分野の社会福祉士(医療ソーシャルワーカー以下MSWと略す)は特に初心者の方々がこの「板挟み」によって多くのストレスを抱えています。
そこでこの記事では、社会福祉士が悩んでいる「板挟み」について徹底解説します。
- 病院における「板挟み」の原因3選
- 社会福祉士の「板挟み」には3つの視点がある
- 社会福祉士はなぜ「板挟み」に悩まされる?
この記事では、上記について具体的に解説します。
この記事を通して、ソーシャルワーク実践で抱えている「板挟み」を可視化して「誰にも相談できない孤独感」に寄り添います。

MSWとして6年目である私のを経験を共有することで、悩んでいる方が「自分だけではない」と思っていただければ幸いです。
病院における社会福祉士が「板挟み」になる原因3選

社会福祉士は病院の中で唯一の「福祉職」です。
多くの医療職が働いている病院では「考え方」や「価値観」等の違いがあり様々な状況で板挟みにあいます。
学問の違い
例えば、医師が基盤とする学問である「医学」は「病気を治療する」ことに焦点を当て、その原因の解決を目指すものです。
一方で、MSWが基盤とする学問は「ソーシャルワーク」です。
ソーシャルワークは、社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエンパワメントと解放を促進する、実践に基づいた専門職であり学問である。
社会正義、人権、集団的責任、および多様性尊重の諸原理は、ソーシャルワークの中核をなす。
ソーシャルワーク専門職のグローバル定義
クライエントの自律性を尊重した結果であれば、原因が解決しなかったとしても立派なソーシャルワークであるといえます。
ソーシャルワークは、クライエントの原因を解決することが直接の目的となっていないため、学問の違いによって「板挟み」にあう場合があります。
価値観の違い
クライエントや医療専門職との価値観の違いによって「板挟み」に合うケースです。
MSWは、社会福祉士になる過程で、先述した「社会正義、人権、集団的責任、および多様性尊重の諸原理は、ソーシャルワークの中核をなす。」という価値観を学びます。
「ソーシャルワーク」という学問は、医学モデルを中心とした医療専門職が大多数を占める「病院」という箱物の中では、極めて異質な価値観です。
医師をはじめとする多くの医療専門職は、この考え方に対する学びが社会福祉士と比較して少ないことが要因と考えられます。
社会福祉士が診療報酬に明記されてから15年程度しか経過していないため、「ソーシャルワーク」という学問を、病院内の医療専門職へ発信していく必要があります。
連携のハブ的役割を担っているため
MSWは、クライエントの日常生活を守るため、病院内外の様々な社会資源とのハブ的役割を担います。
クライエントの心理的・社会的課題が生じた際、介護保険制度等の地域の社会資源に繋いでいくパターンもあれば、断酒会等の専門的な社会資源に繋ぐといったパターンもあるでしょう。
関わる社会資源が多いほど連携の負担は増加するため、社会資源における利害関係者間で隔たりがあると「板挟み」あいます。
「ハブ的役割」には様々な方々とのコミュニケーションが必要になります。
コミュニケーション能力を向上させるためには、技術の取得が必要不可欠ですが、ソーシャルワーク実践の参考書には具体的な方法は書かれていません。
私のブログで、コミュニケーション能力を向上させてアセスメントに活かす記事を書いていますので参考にしてください。
ミクロ・メゾ・マクロの視点からみる「板挟み」

ここで、MSWにおける板挟みの方程式を紹介します。
○○×MSW×〇〇=ストレス ※個人的な見解が含まれます。
「MSW」の部分は「生活相談員」「ケースワーカー」等社会福祉士であれば全て当てはまります。
みなさんいかがでしょうか?〇〇の部分に何を入れても、ストレスという解答になりませんか?
この記事では、ソーシャルワーク実践をする中で重要な3つの視点から「板挟み」について考えてみます。
ミクロ→個人や家族が直面する困難状況等が対象。
例:独居且つ住まいが段差だらけで自宅退院後も不安がある。
メゾ →集団や組織、地域住民等が対象。
例:アルコール依存症に対する断酒会等のコミュニティに参加する。
マクロ→社会全般の変革や文化、制度等が対象。
例:社会福祉士の診療報酬についての交渉をする。
ミクロの「板挟み」は体感頻度が多い
クライエント×MSW×X (家族、ケアマネ、他病院MSW等)=ストレス
ミクロのソーシャルワークは、「個人」を対象とするケースワークであるため、直接的な「板挟み」が多い傾向にあります。
先述した例を参考に考えてみます。「独居且つ住まいが段差だらけで自宅退院後も不安がある」活用できる社会資源を想像してみてください。
「家族に相談する」「介護保険制度の活用や自費で手すりをレンタルする」「地域包括支援センターへニーズの適したインフォーマルサービスがないか相談する」等様々な選択肢があります。
社会資源につなげる時点で「板挟み」になる可能性を想定しておく必要があります。
メゾの「板挟み」はストレスの規模が大きくなる
クライエント×MSW×地域=ストレス
MSWは、メゾのソーシャルワークにおいて「地域」に悩まされて「板挟み」にあうことが多いです。
私が実際に「板挟み」にあった一例を紹介します。
・日常生活自立支援事業の利用者が多過ぎて機能していない

利用者が多過ぎて利用できるようになるまで半年はかかりますね〜
・地域包括支援センターの職員ごとに知識量がピンキリ

成年後見制度に関してはMSWの方が詳しいのではないでしょうか?
・生活保護申請までに謎のローカルルールがある。

窓口まで実際に来ていただかいないと申請できません。
メゾの「板挟み」は個人単体では対処できないことも多く、地域で取り組む課題が多いです。
他人を多く巻き込むため、メゾの「板挟み」はミクロの「板挟み」と比較して数自体は少ないですが負担は大きいと言えます。
マクロの「板挟み」は上の立場になるほど顕在化する。
X (国の政策、社会等)×MSW×メゾ・ミクロのソーシャルワーク=ストレス
マクロのソーシャルワークは社会規模で展開するため、現場で実践していると体感する頻度は多くないかもしれませんが、上の立場になればなるほど「板挟み」にあいます。
例えば、国の政策である「異次元の少子化対策」は、MSWにとっても将来的に重要な政策になることは大方予想はつくと思います。
しかし、メゾ・ミクロのソーシャルワークを中心に実践しているMSWにとっては、規模の大きすぎる話でピンときません。
一方で、部署長クラスのMSWは、自治体の政策や方針などを把握した上でソーシャルワークを展開する「大人のソーシャルワーク実践(呼び名は勝手に作りました)」が求められます。
国の政策と地域の実情の「板挟み」にあいつつ、組織の幹部には「いい顔」をしないといけないという絶望的な状況に陥ります。
医療ソーシャルワーカーあるある3選

ここでは「MSWあるある」を紹介します。
専門職は様々な「あるある」がつきものであり、MSWも例外ではありません。
MSWは病院内における、キング・オブ・板挟み専門職

「MSWあるある」の最大手も「板挟み」です。
MSWのみなさん、本日は誰と誰の「板挟み」になりましたか?医師とクライエントでしょうか?それとも、医師と看護師ですか?
職業柄やむを得ないですが、臨床中、頻繁に「板挟み」に合います。私の中の歴代で1番の板挟みは「職場の幹部×MSW×市議会委員の家族」です。多くは語れませんが、あのときのような忖度支援は二度としたくありません。
先述してきた○○×MSW×〇〇=ストレスの方程式は聖人になればなるほど「ストレス」だった答えが「喜び」「楽しい」といったようなポジティブな答えになるようです。
病院全体が把握をできるが故に「何でも屋」になりがち
医学の視点、看護の視点、リハビリの視点、診療報酬の視点など病院内の専門職の視点をある程度把握できるMSWというポジションは、病院内の「何でも屋」になりがちです。
多角的な視点を生かしてより良いチーム医療を推進するために用いることが望ましいですが、臨床の現場は物事の押し付け合いの果てにどちらの意図も把握できるMSWが登場しがちです。
一番困るのは、どの専門職も守備範囲外の仕事がMSWにまわってきがちなところです。「この仕事の所在は特に決まっていないけど、やる職種が定まっていないからMSWでやる」みたいなことありませんか?
エビデンスを大切にする医療従事者が、その部分に関しては急に大雑把になるという現象が時折見受けられます。「〇〇したいので家族と連絡してもらえませんか?」に関してはご自身でやっていただきたいと思うのは私だけでしょうか?
MSWは福祉の専門職です。「プライドを持って仕事をしている」は大袈裟かもしれませんが、MSWとしての幅広い医療、福祉の知識を他の専門職の都合の良いように利用されたくはありません。
しかし、病院内のヒエラルキーでMSWは立ち位置が低い傾向にあるのも事実です。
医師、看護師、セラピスト等と比較して、直接患者さんに触れない間接的な仕事であることが影響していると考えられます。
その部分を掘り下げてもMSWの価値を高めることは難しいため、専門性を高めて多職種に認めてもらうしかありません。個人で行うのは限界がありますので、ぜひみなさんで手を取り合ってMSWの価値を高めていきましょう。
友人に仕事内容を聞かれたときに困りがち
友人などに仕事内容を聞かれたときに困りがちです。
本来であれば、MSWについてすらすらと説明できることが望ましいですし、本当の意味で専門職としてモチベーションを高く、臨床にあたっていることを証明できるでしょう。
「公務員してます」「看護師してます」みたいなノリで「MSWしてます」と発言した際には、90%以上は「どんな仕事?」と質問されることでしょう。
MSW自身が仕事内容について可視化できていないのですから、当然のリアクションですよね。社会福祉士ですら、介護職と間違われることも多いですから、MSWは日本全体を通してまだまだ普及していないことが顕著に表出する瞬間です。
病院に入院してはじめてMSWの存在を知る患者さんや家族も多いです。目の前の患者さんや家族に対して直向き且つ謙虚に臨床していれば、少しずつですがMSWの存在は普及していくことでしょう。
MSWという言葉が普及してくると、それだけ退院困難な患者さんが増えて、超高齢化社会が加速していると捉えることもできそうです。
まとめ 「板挟み」にあうのは必然

社会福祉士は対人援助職ですが、社会福祉士が対象とする範囲は「個人」に限定されていません。
先述したミクロ・メゾ・マクロの視点からソーシャルワーク実践を展開するため「板挟み」にあうのは必然ですし、「板挟み」にあわない支援は妥協のある支援だと思います。
「板挟み」はソーシャルワーク実践において必要な過程と捉えて良いと思います。
両親であっても、仲の良い友人であっても、恋人であっても「価値観の違い」はあります。その価値観をソーシャルワーク実践を通して最善の形に仕上げていくのが、私たち社会福祉士の役割だと思っています。
今回はMSWの「板挟み」について解説しました。「板挟み」も“あるある”ですが、急性期のMSWは「追い出し屋」になることも“あるある”です。
以下の記事では「MSWが追い出し屋にならないための交渉術」について解説しているので、こちらの記事もぜひ併せて読んでみてください。
noteではブログでは発信できないソーシャルワーカーの実践について具体的かつ論理的に解説していますので「ソーシャルワーカーの業務を可視化したい」という方は必見になります。

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