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noteメンバーシップを2024年7月から始めました。Keiが日常的に実践するミクロレベルのソーシャルワークで得た失敗経験を共有し、同じような失敗を予防していく狙いがあります。Keiは学者ではないので体験談が中心ですが、必ずみなさんの実践に還元できます。
・アセスメント能力を磨きたい!
・どんなアセスメントが効果的なの?
・参考書に載っていない画期的なアセスメント技法を知りたい!
急性期病院の医療ソーシャルワーカー(以下MSW)は、病院機能の特性上限られた在院日数の中でクライエントの退院支援を促進しければなりません。
長期的に関わることができないクライエントへの適切なアセスメントは、高度な技術が求められます。
私は約3年間二次救急の地域医療支援病院でMSWをした後に転職して、現在は三次救急の地域医療支援病院でMSWをしています。
当記事では「短期間で信頼関係を築けるアセスメント技法」を解説します。
この記事を通じて、在院日数が限られている状況でも簡単にクライエントのニーズを引き出すアセスメント技法を伝授します。
効果的なアセスメントを行うためには、雑談力を磨くことが重要です。ソーシャルワークと雑談力は一見対極なイメージにみえますが、深い関連性があります。
Kei
ソーシャルワークの生命線といえるアセスメント能力が向上する方法を、参考書とは別の視点で解説します。
ソーシャルワークにおけるアセスメントとは?
アセスメントは様々な問題の中から相談援助の対象とする問題を選定するために、利用者や家族等から情報収集、問題分析を行なって問題の原因を究明します。
クライエントが「どのような人」で「どのような環境」で「どのような問題」を抱えて、問題を「どのように認識」して(できず)「どのように対処」して(できずに)いるのか。
問題を「どのように評価」して「どうしたい」と考えているのか等を把握していくプロセスであり、その過程における一つひとつの情報です。
上記の評価を統合した上で、見えてくる「クライエント像」に対してアプローチを行います。
これらの情報収集をする際に、雑談力は大きな武器になります。
雑談力を活かしたアセスメント技法 3つ
MSWは「コミュニケーションが苦手な人は致命的」といいたいところですが、私は苦手でも良いのではないかと思っています。
MSWも人間ですので、コミュニケーションが得意な人もいれば、不得意な人もいます。
仕事のときだけ「MSWを演じる」くらいが、メリハリがでて丁度良いかも知れません。
雑談の雰囲気をそのままにアセスメントする
雑談力を活かしたアセスメントのポイントは「それまでの雑談の流れのまま本題に入る」ことです。
「ところで本日は〜」「それで今日なんですが…」のような展開は、会話の流れに「間」を作ってしまいがちです。
これでは「会話の流れを断ち切る」ことによる違和感につながります。
相手も緊張してしまい、面接を警戒される可能性が高くなります。
お話を伺っていて、お力になれると思ったのですが
実は、私も同じことを考えておりまして……
あくまでも自然な流れで、自然と本題に入るためのフレーズを身につけておきましょう。
MSWの現場は、ポジティブな話ばかり飛び交う環境ではありません。
病院という特性上、様々なリスクをクライエントに伝える必要があるため、ネガティブなコミュニケーションなりがちです。
ネガティブな内容を伝える際は、雰囲気を少しでも緩和するために、雑談で構築してきた信頼関係をそのままに本題を伝えることが重要です。
「なるほどですね」「そうですね」に代わる援助技術はオウム返し
あ〜なるほどですね!
そうですね〜!
「なるほどですね」「そうですね」はコミュニケーションで頻繁にするリアクションですが、避けたほうが無難です。
理由としては、会話を無条件で止めてしまうことにあります。
言い方に違和感があり、クライエント次第では「話を本当に聞いているの?」といったような不信感を与えたり、不快感につながります。
会話の流れを止めないテクニックとしては「オウム返し」が有効です。
母は独居で生活しています。
お母様は独居で生活されているのですね。
典型的なオウム返しの技法ですが、質問形式で返すなどして話が広がりそうな言葉を付け加えることで、違和感なくアセスメントができます。
母は独居で生活しています。
お母様は独居で生活されているんですね。独居が継続できている秘訣はなんですか?
オウム返しのテクニックに関しては、以下の記事でも紹介させていただきました。
病院の“追い出し屋”になることを防げる
うなずき方や質問の仕方など、雑談をうまく広げるには相手に対する「あいづち」が非常に重要です。
質問の仕方一つでその後の会話の広がり方が変わってきますし、何よりも人は「自分の話を聞いてもらえると安心する」「嬉しくなる」生き物です。
自分が話すことに気を取られるのではなく、聞き方を洗練させていくことで、雑談の質、コミュニケーションの質が高まっていいきます。
良いあいづちは以下のようにすることが推奨されています。
あいづちの「さしすせそ」
- 「さ=さすがですね」
- 「し=知らなかったです」
- 「す=素敵です」
- 「せ=センスがいいですね」
- 「そ=それはすごいですね」
これらのあいづちは、否定をする要素が一切ないことがポイントです。
全てこれにならう必要はありませんが「追い出し屋」にならないMSWに共通するのは「相手の話に価値がある」というリアクションを取れることです。
「なるほどですね」「そうですね」の乱用は病院の「追い出し屋」になる原因になります。
雑談力が身につけばアセスメントは簡単になる
雑談について、以下のイメージを抱いている人が少なくありません。
- あたりさわりのない話をして場を持たせること
- どうでもいいことを、おもしろおかしく話すこと
「雑談力」はラポールの構築やコミュニケーション円滑化の糸口になるため、ソーシャルワーク実践において身につけたい技術です。
面接やカンファレンス前にアイスブレイクとして雑談をはさむことで、その後のコミュニケーションがスムーズになります。
雑談力の効果は以下の3つが期待できます。
- 意思決定支援に活用できる
- MSWのストレス軽減つながる
- バイステックの7原則と連動する
意思決定支援に活用できる
具体的には、自分がしたい「本題の内容」から連想されるキーワードをピックアップして、相手と雑談しながら事前に用意したキーワードと相手の言葉をリンクさせます。
例えば、元々自宅で生活されていましたが、病気やケガによって意思疎通が困難となり排泄が全介助の患者さんがいたとします。
私は日中仕事をしていて帰るのが遅いんです。おむつの交換はできそうにありません。
自宅への退院は難しいかもしれません。
クライエントから表出された言葉をリンクさせることが重要です。
仕事をされていては、自宅で介護するのは難しいですよね。
実は、私も同じことを考えておりまして、自宅以外の退院先も視野に入れて考えられたらなと思っていたんですよ。
意思決定をしているのが「クライエント」であることがポイントです。
病院が方針を提案した構図になるとクライエントがどこか人任せになってしまい、責任感が薄れてしまうため、クライエントが「意思決定」する構図を作ることが非常に重要です。
雑談から本題への自然な移行の最大のコツは、「あくまでも雑談からヒントを得た体」で行うことです。
「準備万端で今この話をしています!」のスタンスよりも、「今あなたの持っている課題に対して提案できるものが、そういえばありました!」のスタンスの方が、クライエントは気が楽です。
実際の面接を想定して事前にシミュレーションをしておくことが重要です。
MSWのストレス軽減つながる
当記事の参考文献「超一流の雑談力」の著者である安田正さんは、雑談のレベルが高まると以下のことが起きると述べています。
- 自分に対する印象や評価がガラッと変わる
- 仕事が驚くほどやりやすくなり、成果も上がる
- 苦手な人がどんどん減っていき、人間関係で悩まされなくなる
- どんな場所にも顔を出すことができるようになり、よい縁にも恵まれる
- チャンスにも恵まれるので「食うに困る」ことがない
- 表情や気持ちが明るくなってきて、人生が充実しているように感じられる
「これはアセスメントにいかせる!」と考えソーシャルワークに落とし込みました。
雑談力の技術を身につけることで、ソーシャルワーク実践における人間関係のストレスを少しでも軽減できればいいなと考えております
バイステックの7原則と連動する
社会福祉士国家試験の頻出問題で、バイステックの7原則という援助者が遵守するべき原則があります。
バイステックの7原則
ケースワークの原則 フェリックス・P. バイステック
- 個別化:援助者は、利用者の問題の状況に応じて、個別的に対応する。
- 意図的な感情表現:援助者は、利用者が気持ちを自由に表現できるように働きかける。
- 統制された情緒的関与:援助者は、利用者に対する自らの感情を吟味して応じる。
- 受容:援助者は、利用者のありのままを受け入れる。但し、利用者の逸脱した態度や行動などに同調し、許容するのではなく、そのような行動を現実の一部として認識し、理解するということである。
- 非審判的態度:援助者は、利用者の言動を批判・攻撃したり、援助者の価値観や、倫理観を利用者に押しつけたりしない。
- 自己決定:援助者は、利用者が自らの意思に基づいて決定できるように援助する。
- 秘密保持:援助者は、援助関係の中で知り得た利用者の情報を、利用者の意思に反して第三者に漏らしてはならない。
バイステックの7原則は医療福祉関係者にとって馴染み深い原則ですが、対人援助の根底にある「クライエントによる(個別化)」が悪い意味で原因となり、可視化及び言語化が避けられています。
雑談をソーシャルワークに落とし込むことで、新人MSWにも、面接の立ち回りを可視化して伝えることができます。
雑談力は技術で会得できる
雑談力の本質は3種類の「きく力」
「聞く」「聴く」「訊く」を使い分けながらクライエントの生活像をアセスメントしていくことがソーシャルワークには欠かせません。
これらの「きく」を使いけることで「追い出し屋」認定されるリスクが大きく減少します。
ソーシャルワークが上手く展開されない理由のひとつに、クライエントのニーズを引き出せない(ききだせない)ことが挙げられます。
個人的な見解ですが、ニーズを引き出すことはどんな手段でも構わないと思っています。
雑談の技術を会得してソーシャルワーク実践をすると「クライエントを騙している感覚」に陥る感覚が芽生えるかもしれませんが、間違いです。
コミュニケーション能力が高い人は、様々な技術を用いて3つのきき方を練習しています。
コミュニケーション能力は、天性のものではなく、会得できるものです。
表情と見た目に気を遣う
ソーシャルワークにおいて、信頼関係は非常に大切です。
限られた時間のなかで、ソーシャルワークを展開するための信頼関係を構築するにあたり、第一印象は欠かせません。
結論としては「笑顔」と「服装」と「身だしなみ」が重要です。
これで悪い印象をもつ人のほうが少ないです。
このことから、MSWの面接をクライエントは「加点方式ではなく、減点方式で採点している」と捉えることができます。
アメリカの心理学者であるティモシー・ウィルソンは、「人は初めて出会った相手、最初の2秒で値踏みする」と提唱しました。
表情と見た目を見て、「正直そう」「優しそう」「頼りなさげ」「暗そう」といったおおよその印象を2秒で作り上げる。
会った印象で、好き嫌いのだいたいの印象は決まってしまう。
ティモシー・ウィルソン
人間の視覚情報でわかりやすいのは表情と見た目です。
いかに人格が素晴らしくても、能力が高くとも、見た目にあらわれていなければ人には伝わりません。
まとめ
今回は「短期間で信頼関係を築けるアセスメント技法」について解説しました。アセスメントも重要ですが「スーパービジョン」はさらに重要です。
以下の記事では「スーパービジョン」ついて解説しているのでこちらの記事もぜひ併せて読んでみてください。
このたび、Keiが実践するミクロレベルを中心としたソーシャルワークの失敗経験を共有して、各ソーシャルワーカーの実践に落とし込むメンバーシップ(初月無料で月額590円)を開設しました。
Keiがソーシャルワーク実践の過程で得た学びや、考え方、直面した問題などを「一番近くの席で見られるリアルタイム型のメイキング」みたいなものです。
認定医療ソーシャルワーカーであり、救急認定ソーシャルワーカーでもあるKeiが、メンバーシップの会員しか読めない記事を1ヶ月に3回以上投稿しており、読み物としてお楽しみいただけます。
本を活用して勉強することもオススメです。以下の本は一見ソーシャルワークとかけ離れたように感じますが、今回のブログの参考文献として利用しました。社会福祉士に必要な「ニーズの引き出し方」を学びたいう方は、こちらもぜひご検討ください。
もっとソーシャルワークをカジュアルに学べるブログを生成できれば良いなと思っています。
ぜひ読んで、価値観の引き出しにしてもらえたら良いなと思っています。
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