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- 身寄りなし、虐待といった即時介入必須のソーシャルワークが苦手
- 即座に支援が必要な状況に遭遇すると焦ってしまう
- 危機介入アプローチを実践活用するコツを教えて!
身寄りなし、虐待、健康保険未加入といった、即座に介入しなければならない現場に医療ソーシャルワーカー(以下MSW)はしばしば遭遇します。

私はMSWとして、高度急性期病院で働いています。社会福祉士取得後、最速で認定医療ソーシャルワーカー及び救急認定ソーシャルワーカーを取得しました。
当記事では実践においての危機介入アプローチの活用方法について解説します。
この記事を読めば、今まで慌てて対応していた何気ない実践を危機介入アプローチを紐づけることで、根拠を持ったソーシャルワーク実践に変換できます。
救急医療の現場で、幾度となく危機介入アプローチを活用してクライエントやその取り巻く環境へ支援を展開したノウハウや経験を凝縮しましたので、ぜひ最後まで読んでください。
また、救急認定ソーシャルワーカーの取得は、危機介入アプローチをソーシャルワーク実践に落とし込む手段として有効です。

危機介入アプローチは、救急認定ソーシャルワーカーのテキストに掲載されている重要なアプローチです。
危機介入アプローチは“短期集中的”な働きかけ

危機介入アプローチは、精神保健分野で発達した危機理論をソーシャルワークに導入して体系化されました。
〜危機理論〜
人生の重大な転換点や予期せぬ困難によって、これまでの対処方法が通用しなくなり、精神的なバランスが崩れた状態(=危機)を、どのように克服し、成長へつなげるかを体系化した理論。
危機理論は、「危機を乗り越えることにより、人格の成長が促進される」といった特徴がありますが、危機介入アプローチは人格の成長が目的ではありません。
援助者が危機状況に陥ったクライエントに短期集中的に介入し、以前の状態まで回復するように働きかけることを目的としています。
クライエントが危機状況に陥ったときに用いるアプローチであるため、急性期病院のMSWが用いることが多いです。

ソーシャルワーカーは、クライエント自身が主体的に対処できるように具体的な方法や道筋を示します。
危機状況は医療ソーシャルワークの実践で例えると以下ようなものが挙げられます。
- 急病
- 身寄りなし
- 虐待
- 経済的困窮
- 災害
危機介入アプローチは、急病や災害等の他にも突然の困難やストレスに直面したときに、適切な支援を提供するための手段としても活用されています。
危機介入アプローチの特徴【3つ】

危機介入アプローチの3つの特徴を踏まえ、実践で活用するためのポイントを解説します。
- あくまでも“短期的”なアプローチ
- 具体的且つ指示的
- 早期介入
クライエントが主体であるソーシャルワークと危機介入アプローチは相反するアプローチに思われがちですが、心理学や精神医学など広い分野で活用されており、実践に欠かせません。

危機状況からの回復で重要なのは、「クライエントが“自分で対処できる感覚”を取り戻すこと」です。
危機介入アプローチはあくまでも“短期的”
危機介入アプローチは“短期的”である必要があります。
危機介入アプローチは、“緊急入院”や“虐待”のような突発的な混乱状態に陥ったクライエントの対処能力の強化・社会的機能の回復を目的としているため、クライエントが危機状況でない場合は積極的に活用しません。
「入院するためのお金を用意できない……」や「自宅に認知症の妻がいる状況で入院はできない……」など、危機状況に陥っているクライエントは、絶え間なく変化する状況に混乱して適切な意思決定ができないことが少なくありません。
ソーシャルワーカーは、クライエントの自己決定を促すために、一刻も早く危機状況に陥る前と同等の状態になるよう、機能回復に努める必要があります。

危機状況が回復した後は「指示的」なアプローチを「支持的」なアプローチへ切り替えていきます。
危機介入アプローチは“具体的”且つ“指示的”
危機状況に陥ったクライエントは、「怖い」「不安」といった感情的な混乱状態により、問題解決能力が一時的に低下することがあります。
危機状況にあるクライエントには、受容や傾聴中心の面接よりも、ソーシャルワーカーの専門知識や技術を活用した指示的且つ具体的な対応が有効です。
“生活保護の申請”や“虐待を疑い児童相談所へ通報”などの指示的且つ具体的な対応は、緊急を要する場面で多く強いられます。
一方で、危機状況が発覚したタイミング次第では、クライエントとソーシャルワーカーとの信頼関係が構築されていないこともあるため、高度な面接技術が求められます。
危機状況における信頼関係の構築(ラポール形成)については、私が作成した退院支援マニュアルで詳細に解説しています。
危機介入アプローチは“早期介入”がキーワード
危機状況にあるクライエントへの対応は、時限的になることが多いです。
たとえば、“児童虐待疑い”は「虐待通告受理後、原則48時間以内に児童相談所や関係機関において、 直接子どもの様子を確認するなど安全確認を実施する」となっています。
たとえば、“児童虐待疑い”は「虐待通告受理後、原則48時間以内に児童相談所や関係機関において、 直接子どもの様子を確認するなど安全確認を実施する」となっています。
安全確認は、児童相談所職員又は児童相談所が依頼した者により、子どもを直接目視することにより行うことを基本とし、他の関係機関によって把握されている状況等を勘案し緊急性に乏しいと判断されるケースを除き、通告受理後、各自治体ごとに定めた所定時間内に実施することとする。
当該所定時間は、各自治体ごとに、地域の実情に応じて設定することとするが、迅速な対応を確保する観点から、「48時間以内とする」ことが望ましい。
厚生労働省:児童相談所運営指針
早期介入の目的は、即座に問題解決を図ることではなく、「クライエント目線の世界の見え方」を共有することです。
早期介入する際は、「クライエントが、危機状況下で表出された心理的・社会的問題をどのように捉えているか」を具体的に把握することが重要です。
クライエントの捉え方を曖昧にして支援を進めると、ソーシャルワーカーの視点でみた問題とクライエントが感じている問題の認識がズレてしまうことがあるので注意しましょう。

危機状況のクライエントに対するアプローチが早期であるほど、問題解決にかかるコストを抑えることができます。
危機介入アプローチにおける支援の展開過程【事例】

私が経験してきた中で印象的だった危機介入アプローチの活用事例を、個人が特定されないようにアレンジして紹介します。
救命救急センターの医師から、ソーシャルワーカーへ「これから入院になるんだけど、社会的問題を多く抱えていそう」とのことで介入依頼がありました。
患者の概要は以下の通りです。
60代男性(Aさん)、独居で学習塾を約5年前まで経営されていた
- 元妻がいるがキーパーソンになれない
- 疎遠だった一人息子がいる
- 入院前はアパートに居住
- 預貯金なし
- 健康保険が資格証明書扱い(医療費10割)
- 急病により緊急入院
危機介入アプローチを活用した根拠は、“健康保険証資格者証扱い”であったことに加えて“キーパーソン不在(元妻がいるがキーパーソンになれない)”ことにあります。
Aさんが“健康保険が資格証明書扱い”になっている理由は、少子化や競合によって生徒の確保ができなくなったことによる「学習塾の経営悪化」でした。

学習塾の経営をやめてから、保険料を払っていません……
保険料を追納する財力もなく、手持ち金は200円しかない危機状況であったため、Aさんと相談して生活保護の申請を試みました。
元妻がキーパーソンになれない理由は、長年の飲酒を背景とした「(暴言・暴力などの)アルコール癖が悪くて面倒が見切れない」でした。

息子には心配かけたくないので、連絡しないでください……
当時の状況下では、「元妻がキーパーソンを引き受ける」か「息子にキーパーソンを依頼するか」の2択でしたので、“元妻がキーパーソンを引き受けないのであれば、息子に相談せざるを得ない状況”であることを説明しました。
すると、「息子は、数日前に結婚式を挙げたばかりなので連絡しないでほしい」とのことで、元妻がキーパーソンを引き受ける結果となりました。
数日後に実施した面接では、Aさんに対する日頃の葛藤や苦悩を涙を流しながら語る元妻の思いを受容・傾聴するなどして、精神的ケアに努めました。
入院早期に介入したことにより、“健康保険証資格者証扱い”と“キーパーソン不在”の問題を迅速に把握することができました。

“安心・安全な入院生活を担保する手段”として生活保護を活用しました。生活保護は、後々廃止できる制度であるため、短期的な支援と言えます。
当事例で取り上げたアルコール関連問題をはじめとした依存症回復支援は、医療ソーシャルワーカーの責務となっています。
依存症回復支援については、医療ソーシャルワーカーの職能団体である日本医療ソーシャルワーカー協会が中心となって研修を行っています。
私もその研修に参加して、自己研鑽に努めています。

事例から考える危機介入アプローチのコツ【3つ】

危機介入アプローチは、意図せずに危機状況に陥ったクライエントへ介入することが多く、信頼関係を十分に構築できないことがあります。
以下の3つを意識することで、限られた時間の中で信頼関係を構築しつつ、危機状況を収束に導くことができます。
- アドボカシーの意味を取り違えない
- 危機状況に陥った“具体的な要因”を可視化する
- 「指示的」→「支持的」に立ち回る
アドボカシーの意味を取り違えない
危機状況の現場では、早期の決断や意思決定を強いられる場面があります。
クライエントをリスペクトする姿勢は、どのような危機状況であっても崩してはいけません。アドボカシーリスペクトが欠けると、以下のように変質します。
- クライエントの意向は“一応聞く”程度で後回しになる
- 専門職の判断が最優先される
- 「支援」ではなく、「説得」や「誘導」に置き換わる
アドボカシーは、一歩間違うと“権利擁護”の意味を持たなくなり、いつの間にか“管理”という機能にすり替わってしまうことがあります。
クライエントをリスペクトしない相談援助は、アドボカシーを装った単なる代行決定です。
危機介入アプローチを活用する際は、「支援の主語が“クライエント”になっているか」を常に自問自答しましょう。

アドボカシーを言語化できない場合は、「もしも自分がクライエントの立場になったら…」に置き換えて実践しましょう。
アドボカシーの詳細は、以下の記事で解説しています。
危機状況に陥った“具体的な要因”を可視化する
危機状況に陥っているクライエントは、脳内が「これからどうすればいいのだろう……」という“漠然とした不安”に支配されやすいため、問題となっている具体的な要因を可視化することが重要です。
たとえば、“経済的困窮”によってクライエントが危機状況にある場合は、「何が要因で経済的困窮に陥ったのか」をアセスメントする必要があります。
クライエントが危機状況に陥るまでの前段階に、背景となる物語(ナラティブ)が必ずあります。
危機状況に陥った要因が具体的になるほどクライエントの感情が整理されるため、問題解決能力機能・意思決定能力が回復します。

危機状況に陥った要因は、“過去の生活背景”に潜在化していることが多いです。
ソーシャルワーカーのアセスメントについては、下記の記事で解説しています。
» 認定医療ソーシャルワーカーが実践するアセスメント技法を習得しませんか?
「指示的」→「支持的」に立ち回る
クライエントが危機状況に陥ると、「焦り」「怒り」などの不安定な感情による混乱状態になることが少なくありません。
混乱状態にあるクライエントは、問題解決能力が低下しているため、指示的なアプローチが有効です。
ソーシャルワーカーが専門的な立場から指示的に立ち回ることで、クライエントは危機状況への対処方法を自ら考えられるようになります。
一見すると、ソーシャルワークと相反するように見える「指示的」な対応ですが、危機介入アプローチは“短期的”であるため、危機状況が回復するにつれて、本来の「支持的」な対応に移行させます。

危機介入アプローチは、“クライエントが危機状況に陥っている期間限定のアプローチ”であることから、“短期的”とされています。
病院の“追い出し屋”と認知されてしまうソーシャルワーカーは、クライエントに対して「支持的」ではなく「指示的に」にアプローチしてしまう傾向があります。
“追い出し屋”にならないネゴシエーション(交渉)については、以下の記事で解説しています。
» 病院の“追い出し屋”と認知されないための交渉術を学びませんか?
まとめ

危機介入アプローチでおさえておくべきポイントは、以下の3つの「的」です。
- 短期的
- 具体的
- 指示的(支持的)
今回は「危機介入アプローチの活用方法」について解説しました。
クライエントの危機状況の解決は、非常にやりがいがある一方で、MSW自身に多大なるストレスがかかる実践でもあります。
以下の記事で「危機介入アプローチを適切に活用する技術を含めた退院支援マニュアル」を作成したので、こちらの記事もぜひ併せて読んでみてください。

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