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福祉分野におけるアドボカシーとは?【現役社会福祉士がわかりやすく解説】

ファシリテーション

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noteメンバーシップを2024年7月から始めました。Keiが日常的に実践するミクロレベルのソーシャルワークで得た失敗経験を共有し、同じような失敗を予防していく狙いがあります。Keiは学者ではないので体験談が中心ですが、必ずみなさんの実践に還元できます。

そもそもアドボカシーって何?

実践でアドボカシーを考えている余裕がない

実際の現場を体験したら綺麗事にしか聞こえない

すべての医療ソーシャルワーカー(以下MSW)がアドボカシーの重要性を理解されていながら、多くの業務に追われてアドボカシーを意識する余裕がないMSWが一定数いることも事実です。

私は5年以上急性期病院のMSWを経験して、キャリアを重ねるごとにMSWがアドボカシーを実践に落とし込むことの必要性を感じています。

この記事では「アドボカシーを理解する必要性について」解説します。この記事を読めば、アドボカシーをソーシャルワーク実践に落とし込むことができます。

アドボカシーを意識することはソーシャルワーク実践において極めて重要な要素です。

業務に落とし込むためには、アドボカシーの概念を理解することが重要です。

アドボカシーを簡単に解説

アドボカシーは、advocate (アドボケイト/主張する、指示する、擁護する)という意味で、福祉分野では「代弁」「権利擁護」などと訳され、ソーシャルワークにおいて重要な概念です。

  • クライエントの身の安全
  • 自由な意思表現
  • 社会参加の機会
  • 幸せでいたい気持ち

クライエントの代弁や弁護を行い、支援を通じてクライエントがが当たり前に持っている権利が侵害されないように守る活動です。

日本国憲法において「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない」と規定されており、基本的人権は生まれながらにして持っているものとして、すべての国民に平等に保障されています。

基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」として国民に与えられる(第11条)

すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する(第25条)

日本国憲法

≫ ソーシャルワーク徹底解説

アドボカシーを具体例で解説【6つの形態】

「アドボカシー」と一括りにしても抽象的になりがちなので、具体例を用いて解説します。

アドボカシーには6つの形態があります。

  • ケースアドボカシー
  • コーズアドボカシー(クラスアドボカシー)
  • ピアアドボカシー
  • セルフアドボカシー
  • シチズンアドボカシー
  • リーガルアドボカシー

ケースアドボカシーは個人の権利を守る

ケースとは「個人の」という意味で、集団ではなく個々のクライエントが対象です。

ケースアドボカシーは、患者さんの権利を守るために活用します。

私は、高齢者虐待の疑いがあるケースで、患者さんの権利を守るためにケースアドボカシーを用いました。

体動困難で緊急入院された80代の患者さんに対するアセスメントで以下のことがわかりました。

  • 1週間ほど体動困難で放置されて褥瘡だらけ
  • 2人暮らしで同居の息子がトラック運転手で長期的に家にいない
  • 息子が主治医のICに対しての理解・関心がない

クライエント個人の権利を守るための代弁行為として、ケースアドボカシーを活用しました。

高齢者虐待の疑いについて入院翌日の多職種カンファレンスにて協議し、地域包括支援センターへ通報しました。

養護者による高齢者虐待を発見した者は、速やかに市町村に通報するように努めなければなら ず(努力義務)、当該高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合は、速やかに市町村に通報しなければならない(義務―罰則はなし)。

高齢者虐待防止法

虐待のようなデリケートな問題はクライエントとの距離感を保つアセスメントが重要になります。

≫ 医療福祉分野における効果的なアセスメントを解説

コーズアドボカシー(クラスアドボカシー)は集団の権利を守る

私も実際に足を運んで講演会を聞いてきました。

ケースアドボカシーが個々のクライエントを対象とするのに対し、コーズアドボカシーは同じ状況に置かれている人々全体が対象です。

兵庫県明石市泉 房穂(いずみ ふさほ)前市長の地域政策である「子ども中心の政治」がコーズアドボカシーの良い例です。

こどもの権利を守るため、泉さんが市長になった1年目に「明石駅前に何を建ててほしいか」市民の声を聞いて行政が中心となりの施設整備を展開しました。

市民の要望をもとに図書館や子育て支援施設、中高生が勉強や音楽活動ができる施設を作ったことで子育て世代が活性化し、明石市全体の財政が黒字化しています。

 明石市独自の5つの無料化

  • 医療費:高校生(18歳)まで
  • 給食費:中学生
  • 保育費:第2子以降
  • 遊び場:利用料親子ども
  • おむつ:満1歳まで(宅配も)

財政黒字を継続しながら上記のような子育て政策が行われています。

コーズアドボカシーは、集団やコミュニティ全体の権利を守るために新しい資源を開発しようとする代弁行為です。

Kei
Kei

子育て支援が追い風となり、明石市全体の人口も10年連続で増加しています。

泉さんは、社会福祉士の資格を所持されており、ソーシャルアクションを最も体現されているソーシャルワーカーです。

ソーシャルアクションは世論や国・地方自治体、企業及び民間団体に働きかける活動であるため、アドボカシーは地域社会に影響を与える力を持ちます。

≫ ソーシャルアクションを実例を用いて解説

ピアアドボカシーは同じ問題を抱える人々の権利を守る

同じ問題を抱える人々が集まり、互いのニーズを代弁する行為です

ピア(仲間・同僚)同士でカウンセリングし合うことも含まれるため、精神障害や依存症を抱える人々が、同じ立場にあるピアを支援するために結集します。

依存症回復支援に、ピアアドボカシーは欠かせません。

Kei
Kei

「依存症から回復した人の講演会」や「自助グループ」のようなピアアドボカシー活動を通してクライエントの心理的サポートに貢献します。

MSWは、他の医療専門職からよく思われない傾向にある依存症患者さんの権利を守る必要があります。

≫ 現役MSWが依存症回復支援を徹底解説

セルフアドボカシーは自分で自身の権利を守る

セルフアドボカシーは日本語で「自己権利擁護」と訳され、障害や困難のあるクライエントが、自分の利益や欲求、意思、権利を自ら主張することを意味します。

私の社会福祉士実習は視覚障害者の養護老人ホームでした。実習指導者からセルフアドボカシーについて、当時実習生だった私に熱意を持って教えてくれました。

印象に残っているのは以下の3つです

  • 自分自身で考え、主張し、選ぶ権利は誰にでもある
  • 「目も見えない」「お金もない」それでも自己主張する権利はある
  • 日々の生活は誰かに一方的に指示されたり、決定してはならない
Kei
Kei

視覚障害者だからといって「相談員や介護職が意思決定する必要はない」「どのように生活をしても良い」という解釈に触れたことで、当時実習生だった私の価値観が大きく変化しました。

クライエント自身が自らの権利を主張する行為は、ソーシャルインクルージョンの概念を追求していくために重要です。

≫ ソーシャルインクルージョンを具体例を用いて解説

シチズンアドボカシーは市民の権利を守る

市民が、環境問題や人権問題に対して声を上げる活動がシチズン(市民)アドボカシーです。

以前、私の住んでいる地域で「総合福祉施設を取り壊して大型商業ビルを建設する」という政策が勃発し、地域住民がに反対して署名活動を行いました。

  • 子どもの遊び場がなくなる
  • ダンスや囲碁教室などのサロン活動ができなくなる
  • 地域住民が集まる場所がなくなる

地域住民の署名活動がが行政に通じて、総合福祉施設は取り壊されるどころか再開発され、従来より1.5倍の規模で新しくオープンしました。

行政の権利に抑圧を受けた市民が、市民主体となった市民運動(シチズンアドボカシー)により、充実したサービスにつなげたソーシャルマーケティングの良い例といえます。

≫ いまさら聞けないソーシャルマーケティング

リーガルアドボカシーは法律で権利を守る

弁護士などがクライエントの権利行使を援助したり、クライエントの代弁や弁護を働きかける行為です。

具体的な制度活用事例を3つ紹介します。

・成年後見人制度:判断力の低下した高齢者や障害者の権利を守るために、成年後見人が法的な代理人として活動します。

・日常生活自立支援事業:利用者の自己決定権を尊重し、金銭管理などで自立した生活をサポートするための制度です。

・高齢者虐待防止法に基づいた高齢者虐待防止シェルター:高齢者虐待を防止し、被害者を保護するための法的な措置があります。

アドボカシーは、社会的な問題に対して声を上げ、変化を促す重要な活動です。

群馬県桐生市における生活保護費の不適切受給問題はリーガルアドボカシーによって発覚しました。

記事によると、20代の男性受給者に市との委託契約関係がない県内の民間団体を紹介し、保護費の管理を委ねるよう勧めたとのことです。

契約の際には、市から保護費の受給先とする新たな口座を作るよう指示され、通帳と銀行印は民間団体が預かったため、思うように保護費が使えなくなりました。

男性の母親から相談を受けた司法書士が、市及び民間団体とネゴシエーションを行い通帳と銀行印を返却させています。

Kei
Kei

リーガルアドボカシーは、貧困層の人々の権利を守るために重要です。

≫ ネゴシエーションを心理学で応用して解説

まとめ アドボカシーを理解すればソーシャルワークが深まる

アドボカシーは、特定の問題や権利を支持し声を上げる活動

アドボカシーには6つの形態がある

社会変革や政策改善を促進し、弱者やマイノリティの権利を守る

今回は「アドボカシーを理解する必要性について」解説しました。

アドボカシーが理解できたらソーシャルワークに落とし込むことが重要です。

以下の記事では「ソーシャルワーカーの専門性を磨く自己研鑽方法」について解説しているので、こちらの記事もぜひ併せて読んでみてください。

 

このたび、Keiが実践するミクロレベルを中心としたソーシャルワークの失敗経験を共有して、各ソーシャルワーカーの実践に落とし込むメンバーシップ(初月無料で月額590円)を開設しました。

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Keiがソーシャルワーク実践の過程で得た学びや、考え方、直面した問題などを一番近くの席で見られるリアルタイム型のメイキングみたいなものです。

認定医療ソーシャルワーカーであり、救急認定ソーシャルワーカーでもあるKeiが、メンバーシップの会員しか読めない記事を1ヶ月に3回以上投稿しており、読み物としてお楽しみいただけます。

 

本で知識を深めるのもオススメです。以下の本はソーシャルワーク実践において重要な視点であるマクロレベルとミクロレベルにフォーカスをあてた本です。

社会福祉士であれば必ず読み込んでしまう内容となっているので「今日からのソーシャルワーク実践のクオリティを上げたい!」という方は、こちらもぜひご検討ください。

医療福祉総合ガイドブックは、MSWが日々の臨床で利用する様々な社会資源が解説されており、曖昧になった知識の復習に役立ちます。

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