医療ソーシャルワーカーが病院の「追い出し屋」にならないための「伝え方の技術」を解説

MSW

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noteを2023年11月から始めました。ブログでは発信できない医療ソーシャルワーカーのタブーを表面化していこうと考えています。「MSWってこうだけど表ではいえない」を代弁しますのでぜひ読んでみてください。

・クライエントに伝えたいことが上手く伝わらない

・伝えたいことがスムーズに伝わる連絡調整をしたい

・どれだけ頑張っても内容が伝わらないクライエントの対処法は?

医療ソーシャルワーカー(以下MSW)は様々なクライエントと面接します。時には面接の相手が高齢で理解力が乏しかったり、インテリジェンスが低いクライエントも一定数存在します。

私は5年以上MSWとして病院で勤務しています。約3年間二次救急の地域医療支援病院でMSWをした後に、現在は三次救急の地域医療支援病院でMSWをしています。

当記事ではどんな個性的なクライエントと面接する機会に遭遇しても必ず「伝わる技術」を解説します。記事の内容を実践すれば面接の負担を大きく軽減することができます。

病院の「追い出し屋」にならないためには、クライエントとの面接内容に対して「納得」「理解」することができたかが重要になります。伝わり方次第で面接や連絡調整の時間を削減することができます。

Kei
Kei

日々の実践が伝えた「つもり」になっていないか、振り返りながらぜひ最後までください。

人は正しいかどうかではなく「伝わったことで」判断する

伝え方の技術が向上すると、主に以下のようになります。

・問題解決の役に立つ

・伝わったことで状況が改善する

・モテるようになる

・仕事相手に喜ばれる

・文章や文字を書くことが楽しくなる

・頭の中のモヤモヤが減る

・自己肯定感が高くなる

・自分のやっていることの価値を発見できる

あなたは人から聞いた話をどれくらい覚えていますか?私は自慢ではありませんが、かなり忘れてしまいます。数週間前に友人と会話をした内容の8割程度は、既に何も覚えていません。

果たしてクライエントは、私たちが伝えた内容を、明確に覚えてもらえているのでしょうか。

一度伝えただけで伝わったと思うのは危険

先日以下のようなツイートをしました。

MSWの十八番である「面接」が良かったか悪かったを判断するのは、「自分」ではなく「クライエント」です。自分本位の面接では、単なる自己満足になってしまいます。

私の実践を例にとって考えてみます。

地域包括ケア病棟のある病院へ転院することが決まったクライエントAさん。MSWからの説明もしっかりと受けて転院していきました。

しかし、約1ヶ月後、転院先の病院でちょっとしたトラブルに発展してしまいました。

クライエント<br>
クライエント

地域包括ケア病棟には60日入院できるとKeiさんから聞きました。

確かに地域包括ケア病棟は60日入院できますが、あくまでも「最長」です。状況によっては、60日よりも早く退院する可能性もあります。

私はしっかりと説明したつもりでしたが「最長で」が伝わっていなかったため、クライエントは勝手に「60日間リハビリができる病棟」と間違った解釈で伝わってしまいました。

一度言われたことを忘れないのが仕事のプロかも知れませんが、相談相手は病院機能について詳細に把握していないクライエントです。

過去に、社会福祉士の国家試験勉強をしていた際も、学校の先生から授業で教わったこと一度で覚えたことなんて皆無であり、繰り返し復習してインプットしていたことを思い出しました。

平素、耳にすることの少ない医療現場の言葉は、「一度説明しただけで覚えて」はハードルが高いため、「繰り返し伝える」ことが重要です。

ソーシャルワークの現場においては、面接をした際や連絡調整等の最後に、相談した内容についてあらためてクライエントからMSWへ再度内容を伝えてもらうことで「面接した内容の確認」になります。

私は、電話での連絡調整の際に上記の技法を頻繁に利用しています。

MSW
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面接の時間は○月×日、時間は△時、場所は□□でお待ちしています。

確認のため、Aさんも面接の日時をおっしゃってもらえませんか?

慣れないうちは違和感があるかも知れませんが、この技法の効果は絶大です。

電話での連絡調整で重要なことは、メモをとるように促します。さらに先述したように、クライエント自身の言葉で話していただくことで、クライエント自身に責任感がうまれます。

自分の中で理解、納得できていないことは、上手く相手に伝えることができないため、何が伝わり、何が伝わっていないか確認することができます。

介護タクシーの手配、他院への転院で、個室からの受け入れ(差額ベッド代が発生する場合)になる際等、外部への責任が生じる際は特に確認が重要です。

伝えた内容が正確に伝わっているかの確認は必須

医療ソーシャルワークの臨床では、「伝わっているかどうかの確認」が有効である状況が大きくわけて3つあります。

  • 面接を終えた際の最後 ××病院への転院の際、最初は1日〇〇円の個室へ入院になります。
  • 物事(退院等)が決まったとき 1日〇〇円の個室へ入院になります。
  • 実際に実行に移すとき 転院のお見送り前に(さりげなく)「1日〇〇円の個室へ入院ですね」

金銭が絡む相談は「言った」「言わない」の論争に発展しやすいため、確認の意味を込めて、クライエントからMSWへ伝えてもらうことを心がけてみてください。

Kei
Kei

半年継続すれば、伝達ミスのトラブルが大きく減少したことを、肌で実感できます。

「話がうまい=伝え方がうまい」ではない

社会福祉士として、様々な研修に参加する中で、印象に残っている研修と、残っていない研修があると思います。

興味や意欲、内容の問題もあるかも知れませんが、振り返ってみれば、有意義な研修のほとんどは「講師の先生の伝え方がわかりやすかった」と思いませんか?

私自身の体験でいうと、楽しみにしていた研修に参加した際、その講師の方は非常に話が上手で、スライドもまとまっていて見やすかったです。

しかし、全く心に言葉が入ってこないのです。非常にスムーズにスラスラと話す方でしたが、「これはメモを取りたい!」と思えるような言葉がありませんでした。話がうまいことと、伝わるということは別物だということを思い知らされました。

「伝わる」とは、伝えたい相手の心に「印象+記憶」を残すことが重要です。研修に参加した際の講師は、ただ言いたいことを羅列した結果、残念ながら「伝わらない」研修になってしまったのだと思います。

Kei
Kei

「気づきがあった」「心に響いた」「学びになった」と感じる研修であれば伝わっている証拠になりますが、「話がうまかった」だと次も行きたいと思う動機としては、少し物足りないですね。

介護・福祉の転職サイト『介護JJ』

「伝わる」は7階建て構造

「伝え方の技術」を身に付けるには、物事の全体像や本質を理解することが重要です。「追い出し屋」にならないための伝え方のコツは「クライエントの頭の中を想像すること」です。

アセスメントで収集した情報により、クライエントがどのような生き方をされていたのかを把握します。そのクライエントの生き方に沿った「伝え方」で支援を展開していきます。

参考文献の著者である柿内尚文さんは、「伝わる構造は、7階建てのビルのような構造になっている」と述べています。

伝わる構造1階 ゴール設定

「伝わる」にはゴール設定が必要です。「何のために」を明確にします。

たとえ雑談であっても、ゴールはあります。「アイスブレイク」がゴールのときもあれば、「相手と仲良くなる」ことがゴールになることもあるでしょう。

MSWは、クライエントのニーズに合わせて「面接のゴール」を明確にしておく必要があります。

以下の記事で、MSWの病院機能ごとの「ゴール設定」の参考にしていただければ幸いです。

伝わる構造2階 納得感

納得感があって初めて「伝わる」が生まれます。納得感とは理解する、腑に落ちるということです。

MSW
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この病院は、長く入院できませんので早急に退院先を検討する必要があります。

このフレーズだけ言われてもクライエントに納得してもらえるはずありません。しっかりと「長く入院できない理由」をクライエントへ説明する必要があるでしょう。

以下の記事で「長く入院できない理由」について解説しています。

≫【MSW以外の社会福祉士向け】MSWの役割について

伝わる構造3階 相手ベース

先輩MSW
先輩MSW

障害年金申請の件〇〇さんに伝えられた?

後輩MSW
後輩MSW

説明したんですけど、〇〇さんが理解力不足でわからなかったみたいです。

先輩MSW
先輩MSW

それだと伝わったことにならないでしょ。

後輩MSW
後輩MSW

でもきちんと説明しました!

「説明しました(伝えた)」=「伝わった」という誤解、頻繁にありますよね。

クライエントが理解し、腑に落ちていなければ、それは「伝わった」のではなく「伝えた」だけです。「伝える」は「自分ベース」です。自分が説明して満足している状況であり、いわゆる自己満足になっています。

「伝わる」は、「クライエントが」理解する、腑に落ちる、納得する。「クライエントが」の部分を満たすことで、「相手ベース」になります。

私がMSWになって、間もないときは「自分ベース」な伝え方ばかりでした。

新人Kei
新人Kei

あの患者さんには何回も伝えたのに…

新人Kei
新人Kei

あの人の理解力がないのが悪い

このように思ってたことが何回もあります。しかしこの本を読んで、私の「伝え方」が上手くなかったのだとわかりました。

一方で、「相手ベース」で考えている人は、伝わらなかった場合、表現を変えたり、他の方法を試したりと伝わるための動きをとります。

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経鼻胃管が挿入されています

例えば、様々な病院で目にすることの多い「経鼻胃管」ですが、クライエントには馴染みのない言葉であり、想像がつきません。

MSW
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お鼻から胃まで管が通っています

「鼻から胃に通っている管」と伝えれば、何らかの不快感がありそうな容態であることは想像できるのではないでしょうか。

伝わる構造4階 見える化

話がわかりやすいといわれている人は「見える化」が非常に上手いです。頭の中にイメージが浮かばないと、それは伝わっていない可能性が高いです。

「伝わる」とは「納得感を得ること」と先述しましたが、納得感を得るためには、いかにクライエントの頭の中に「見える化」させることが重要です。

MSWが説明する社会資源の中には、クライエントに馴染みのない言葉も存在します。

社会資源の「見える化」一例

・主治医の意見書→市役所がクライエントを把握するための取扱説明書

・障害者手帳→障害者界隈の運転免許証

・地域包括支援センター→高齢者に特化した市役所

・ケアマネ→学校でいう担任の先生

上記の例のように、なるべくクライエントの身近なものに置き換えて「見える化」することで、伝わりやすくなります。

伝わる構造5階 聞く力

知り合いの営業をされている友人と食事をした際に、飛ぶ鳥を落とす勢いで商品を売って、営業成績を残していることに驚愕して、秘訣を聞いたことがあります。

営業の仕事は、いかに「自分たちの商品を売るか」ではなく、相手に「必要な商品を紹介できるか」に限ると話していました。

売り込むのではなく相手の話をとにかくよく聞いて、相手にとって、自分たちの商品が相手の生活に貢献できるかを見つけ出すようにしているとのことでした。

ソーシャルワークも同様で、クライエントの話を聞きながら、ニーズを見つけ出すことが重要です。社会福祉士は「話すことが仕事」だと思われがちですが、本質は「聞くこと」であるということが社会福祉士6年目にして理解できました。

「聞く力」の重要性は、下記の記事でも解説しました。

≫ 医療ソーシャルワーカーが「追い出し屋」にならないための話し方

伝わる構造6階 親近感

「親近感」も「伝わるか伝わらないか」を左右する重要な要素です。親近感は、正反対の「嫌悪感」を考えるとイメージしやすいです。

自分の嫌いな人の話って素直に入ってこないことが多いです。妬みなのか、恨みなのかはさておき、物言いをつけたくなったり、揚げ足を取ってみたくなったりすることがあると思います。

言われた内容が正当なことでも、どこか認めたくない感情も働くことがあるでしょう。

一方で、「親近感」があると、身体と脳は「相手を受け入れるモード」になり、少しくらい違和感があっても、思わず「イエス!」と言ってしまうことがあります。

そのくらい、親近感は、判断を左右しています。そんな親近感には、「わかせ方」があります。

親近感をわかすコツ
  • 共通点を見つける(例:私の祖母も独居なんですよ〜)
  • 相手に興味を示す(例:娘様はどのようなお仕事をされているのですか?)
  • 自分のダメをさらけだす(例:空き時間についついお菓子をつまんじゃうんですよね〜)
  • 笑顔(例:…当然ですね)

私たちが「楽しい!」と思うときはどんなときでしょう。大体は、「自分がよく喋って、相手がよく聞いてくれたとき」ではないですか?

クライエントの「話を聞いて」信頼関係を構築し、「親近感を生む」ことで、クライエントは、「私たちの言うことを聞いてみよう」と思うようになります。

信頼関係の構築、親近感のわかせ方は、心理学の活用が非常に有効です。下記の記事で解説しており、今日から使うことができますので是非ご覧ください。

≫ 現場では教えてくれない援助技術!面接の際に活用できる心理学6選

伝わる構造7階 信頼感

ある有名な経営者がこんなことを言いました。

経営者
経営者

たくさんの失敗が、成功を引き寄せます

一方で、みなさんの周りにいるいつも失敗ばかりしている人がこう言ったらどうでしょうか。

毎日失敗社員
毎日失敗社員

いま僕がしているたくさんの失敗は、将来成功を引き寄せるはずです

双方共に、内容はほぼ同等ですが、決定的な違いは「信頼感」です。「この人が言うなら信頼できる」となれば、伝わる可能性はそれだけ大きく上がります。

病院におけるMSWの役割を全うし、他の職員から信頼を得ることができれば、それが自信につながり、クライエントに対して誠実に向き合うことができるでしょう。

≫ 病院の「追い出し屋」と思わせない医療ソーシャルワーカーの面接技法

非公開求人に強い介護職求人サイト

この記事のまとめ 伝える技術 伝わる技術

 「伝える」とは、自分が話したいことを相手へ言う状態のことを指します。相手が理解していなくても、話したいことを相手へ言うと「伝えた」ことになるという解釈なようです。

一方で、「伝わる」とは、自身の言った内容を相手が理解し、人の行動に変化が起きた状態を指します。

人に「伝わる」話し方に才能は不要です。技術さえ身につければ、即座に活用することができます。このブログを最後まで読んでいただいたみなさんであれば、今日から活用できると思います。

「伝わる技術」セットで面接の組み立て方を学べば病院の「追い出し屋」と呼ばれることはなくなるに違いありません。

noteではブログでは発信できないソーシャルワーカーの実践について具体的かつ論理的に解説していますので「ソーシャルワーカーの業務を可視化したい」という方は必見になります。

タブーとされてきた医療ソーシャルワーカーのリアルを代弁します|Kei@社会福祉士(X (フォロワー1,000人)、ブログ(月間3500PV))
医療ソーシャルワーカーはソーシャルワークができるの? 医療ソーシャルワーカー大変って聞くけど実際は? 現役医療ソーシャルワーカーの本音を聞かせて 急性期病院の医療ソーシャルワーカー(以下MSW)として就労しているみなさんは現状の働き方に満足している方は少なくありません。 救命救急病棟を担当している私が(高度)急性期病院

参考文献である「バナナの魅力を100文字で伝えてください」では、16通りの「伝わる技術」が紹介されていましたが、続きはタイトルの意味も含めて、実際に読んでいただくことをお勧めします。

バナナの魅力を100文字で伝えてください 誰でも身につく36の伝わる法則

パン屋ではおにぎりを売れ 想像以上の答えが見つかる思考法

MSWソーシャルワーク実践
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Kei

現役社会福祉士6年目。
高度急性期病院の医療ソーシャルワーカー。
社会福祉士取得後最速で「認定医療ソーシャルワーカー」「救急認定ソーシャルワーカー」の資格取得に挑戦中。
資格:社会福祉士、第一種衛生管理者、両立支援コーディネーター、がん専門相談員。
趣味:筋トレ、サウナ、音楽フェスにいくこと。愛猫を愛でること。

当ブログは、個人の解釈・見解が含まれます。
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